職質すると「暇あるなら樋田追っかけんかい」と一蹴された

13日午前0時には富田林署から北へ約9キロの松原市内で黒いミニバイクが盗まれる被害が発生。午前1~2時に大阪市浪速区で黒いミニバイクによるひったくり事件が相次ぐも、大阪市内は緊急配備の対象外だった。14日には、兵庫県尼崎市の知人男性の自転車かごに、樋田容疑者が助けを求めたとみられるメモ書きが置かれたが、府警がその事実を把握したのは逃走から約2週間後だった。

拘留中の人物が逃走する事件は過去にも起きている。

2014年1月、横浜地検川崎支部で集団強姦容疑などで逮捕された男が弁護士と接見中に逃走。18年5月には、名古屋市の病院で、現住建造物等放火容疑で逮捕され鑑定留置中だった男が逃走した。だが、いずれも2日以内に確保された。18年4月、愛媛県今治市の刑務所で服役中の男が逃走した事件も23日後に逮捕された。

府警が長期の逃走を許した背景には樋田容疑者の周到さもある。逃走翌日夜、松原市の隣の羽曳野市で女性がバッグをひったくられる被害が起きた。状況から樋田容疑者が関与したとみられるが、被害品のバッグは大阪市内で見つかった一方、一部報道によると、女性のスマホは富田林市内にとめられていた軽トラックの荷台に置かれていた。府警がスマホの位置情報を調べることを見越した捜査攪乱を狙った行動だろう。

逃走後、留置場内からは、当直担当の署員の名前やシフトが書かれたメモ書きが見つかっている。府警幹部は「何度も警察の世話になっており、対応を知り尽くしている。もっと警戒しておくべきだった」と悔しさを滲ませる。