保有株16兆円の含み益を洗い出す

それなのに孫会長が投資の手を緩めないのはなぜだろうか。ヒントはアリババ株にある。保有株の上昇による「含み益」はBSには記載されていない。

時事通信フォト=写真

「持株比率が20%以上~50%以下の場合は関連会社となり持分法が適用されます。持分法が適用される会社の株式は時価評価されません」(川口さん)

だが、含み益自体はソフトバンクのホームページで「保有株式株価情報」として公開される。

「アリババの保有分だけでも約15兆。それにヤフーの保有分1兆円などを合わせると、16兆円は超えます(18年2月21日現在)。これらの株を売却すれば16兆円のキャッシュは用意することができます。さらに、そのほか公開されていない未上場株もキャッシュ化できます」(米島さん)

こうして一つひとつを解き明かしていくと、安定した経営の実態が見えてくる。一見ギャンブルにも見える孫会長の巨額投資だが、極めて合理的な判断のもとに行われているのだ。

米島慶一
クレディ・スイス証券 アナリスト
 

川口宏之(かわぐち・ひろゆき)
公認会計士
会計コンサルティング業務や、会計理論をわかりやすく伝える研究・講演を行う。著書に『決算書を読む技術』など。
 
(写真=時事通信フォト)
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