まずは有利子負債から見ていこう。投資関連で内訳が明記されているのが13年7月に2兆円で買収した米携帯子会社のスプリントで負債額は4兆1365億円。16年9月に同社最大の3.3兆円で買収した英半導体大手のアームは返済期間が長期にわたる固定負債で資金を調達。さらにSVFでも負債は膨らむものの懸念材料にはならない。
「SVFは17年5月の開始から5年かけてソフトバンクが325億ドル(約3.5兆円)、共同出資者のサウジアラビアなどが残りの652億ドル(約7兆円)を出資して段階的に約10兆円の運用をする取り決めです。ソフトバンクのリスクは最大で出資分の325億ドルまでしかありません」(米島さん)
また、スプリントの有利子負債4兆1365億円については返済義務のない契約だ。
つまり実質的な有利子負債は11兆6684億円になる。
だが、投資のリスクはほかにもある。見落としてはならないのが「のれん代の減損」だ。
のれん代とは買収した企業の資産価値(純資産)以上に支払った金額をいう。たとえば純資産が5000億円の企業を買収する際に、その企業のブランド力や技術力を考慮して6000億円で買ったとすればのれん代は1000億円。この金額は無形固定資産としてBSに計上されるが、回収が見込めなくなると減少し、PLにも損失として計上(減損)されることになる。
これは会計基準により処理が違う。ソフトバンクのように国際会計基準(IFRS)を採用する場合は、日本の会計基準と異なり、のれん代を定期的に費用化(減損)しない。減損が発生すると一気に多額の費用がBS上に計上されるリスクが高まる。
ソフトバンクの場合、「投資家向け説明会資料」にアーム2兆9110億円、スプリント3328億円を含む4兆3831億円とのれん代の内訳がある。
整理すると有利子負債11兆6684億円の返済に加え、のれん代4兆3831億円が費用化されるという減損リスクがある。