本業を別に持ちながら“間借り”でカレー店を営業

背景には、多様な営業スタイルのカレー店が増えたことがあるようです。

ここ数年、カレー界で熱いキーワードといえば“間借り”。自分の店舗を持たず、バーや喫茶店の一角や営業時間外で営業するカレー店を意味します。スパイスカレーの聖地・大阪から全国に広まったと言われていますが、実はこの「マジョラムカレー」も“間借り”の人気店。都内のとあるバーで、週一回、木曜日の夜のみ皿数限定で営業しています。他にも、イベントやフェスで出店する“流し”のカレー店もあります。

シェアリング時代に突入し、カレー店デビューの敷居はぐっと下がりました。つくり手の裾野は飛躍的に広がり、また、彼ら、彼女たちのほとんどが本業を別に持っているため、より趣味性の高い、わがカレー道を邁進する個性派カレーが多くなったのではないでしょうか。

「dancyu」(9月号)より。「僕らを夢中にさせる スパイスカレー8軒」 撮影=本野克佳

インディーズなカレー店に負けず劣らず食べ手も「先鋭化」

そんなインディーズなカレー店が多く出現する中で、食べ手のほうも先鋭化されていっています。“カレーマニア”と呼ばれる人々です。

その多くは、つくり手同様、カレーとは別の本業を持ちながら(カレーとリンクした本業の方もいます)、仕事と同程度(あるいはそれ以上?)のエネルギーを費やして、日々、店から発信されるSNSをチェックしつつ、カレーを食べ歩いては写真におさめ、自身のSNSにアップしています。中でも、圧倒的な皿数をこなす一部の方々は、カレー界のインフルエンサーとして絶大な支持を得ています。

東京では、「カレーおじさん\(^o^)/」「カレー細胞」「アジアハンター」などが有名です。大阪では、三嶋達也さんが始めたFacebookのカレーファンコミュニティー「口癖はカレー」が7500人超のメンバーを擁するまでになりました。ちなみに、三嶋さんは、週一で自身のカレーを供す「ニッポンカリー オルタナ。」も営業しています。

さらに、カレーマニアの中には、女性に特化した“カレー女子”と呼ばれる方々もいます。例えば、新潟のご当地アイドルNegiccoのMeguさんは、自他共に認める“カレー女子”。先日の彼女のインスタグラムには、真っ赤な表紙のdancyu9月号カレー特集を手ににっこりほほ笑む写真をアップしてくれて、編集部一同、心が癒やされたのでした。

さて、舌の肥えたカレーマニアたちの審美眼にもまれながら、やがてその一部は行列店へと育ちます。さらに、場合によっては晴れて自分の城を構えて独立する場合もあります。そして、待望の新時代スターも徐々に登場しています。