重過失とは、故意に比肩するほど重大な過失で、酒酔い運転や居眠り運転なども含まれるが、重過失運転での事故では、過失割合が2割程度上がる。つまり、進入車と直進車とで「10対0」になるわけで、進入車が事故の全責任を負う可能性がある。
ちなみに、警備員が明らかに不合理な誘導(直進車があるのに進入を指示するなど)をした結果、衝突事故が起こった場合、
「過失割合は変わらないが、警備員と進入車の運転手との共同不法行為(民法719条)が成立し、警備員も進入車の責任を一部肩代わりする可能性がある」(同)
ここでいう警備員が、たとえばガソリンスタンドの店員だとしても、事情は同様である。
では、歩道の歩行者が警備員の指示に従わず、歩道に進入してきた車両と接触した場合はどうなるのだろうか。
保険会社の交通事故査定担当者のバイブルともいわれる「別冊判例タイムズNo.16」(判例タイムズ社)によれば、
「歩道等を通行する歩行者の保護は絶対的といってよく、横断歩道上と同様に、原則として過失相殺を考えなくてよい」
とある。歩行者が意図的にぶつかった場合は論外だが、歩行者に「重過失」があったとしても、過失相殺で不利になる可能性は極めて小さい。
なお、いうまでもないが、以上の話はあくまで法律上の権限と責任の話であり、事故を防止するためのものではない。仮に、たとえば警備員の誘導が歩行者より車両を優先しすぎていたとしても、物理的に立場が弱い歩行者は、怪我をしないためには誘導に従うしかないのだ。