日本人は国際競争というキーワードに過剰な反応を示します。たとえばTPPにしても、「自由化されたらすぐに日本の農業はやられてしまう」という感情論で騒いでしまう。しかし、ではTPPに参加しなければ日本の農業は発展するんですか。現在日本の農業従事者の平均年齢は65歳です。10年後には75歳になる彼らが日本の農業を全面的に支えられるのですか?


関西学院大学での講演に、学生をはじめ多くの人が駆けつけ、会場は熱気に包まれた。

今回の震災、原発事故を機に日本は沈むわけにはいかないんです。むしろ復興を乗り越えて、国際競争に勝ち抜く強い日本にならなくてはいけない。競争を避けるのではなく、自らその渦中に飛び込み、そして勝者となる国。そういう日本を、私は一政治家としてつくっていきたいと思っています。

その考えの軸になるのは「自助、自律」です。自分を助け、自分を律する。エネルギー政策にしても他の政策にしても、単なる感情論や二分論ではなく、未来にわたっての時間軸の中で、何が日本の将来にとってベストな解答なのか、真剣に考え議論していく姿勢が大切です。

一国を担うリーダーとして相応しい人材は誰なのか。どの政党、どの政治家を信じるべきなのか。皆さん、迷われることも多いでしょう。真のリーダーを見極めるにはポイントがあります。その人が「政治家としてどこまでいいづらいことをいっているか」を見極めるのです。

政治家にとって一番簡単なのは、「できないことをできる」といい、「高いものを安い」といい、「配れないお金を配る」と国民に約束することです。

反対に難しいのは、「できないことはできない」といい、「国民にも負担はかかる」と明言することです。しかしその痛みをあえて「痛いですよ」と伝えながらも、「でもその先に自分はこういう社会をつくりたいんだ」というビジョンをしっかり持っている人であれば、そのメッセージは必ず国民にも伝わります。その姿勢が真のリーダーとしての器をはかる一つの指針となるのです。

※本稿は、6月27日に関西学院大学西宮上ヶ原キャンパス・関西学院会館で開催された第16回国際学部連続講演会「3.11後の日本」の講演要旨です。

※すべて雑誌掲載当時

(三浦愛美=構成 小倉 泰=撮影 ロイター/AFLO=写真)