特養にはコネか重介護度が必要
政府が国会に提出した2010年版「高齢社会白書」によると、現在65歳以上の高齢者人口は、過去最高の2901万人になった。国民の22.7%、つまり5人に1人は高齢者だ。さらに今後の人口推移を見てみよう。現在の少子化がこのまま進めば、わが国の総人口は現在の1億2751万人から、45年後の55年には8993万人にまで減少すると試算されている。一方、高齢者の割合は増え続ける。続々と退職していく団塊の世代と、それに続く団塊ジュニア世代により55年には国民2.5人に1人は65歳以上となる。電車に乗ると2、3人に1人が白髪交じりの高齢者という異様な光景が眼前に広がることになるのだ。
人間は誰しも、老いだけは止めることができない。両親が、妻が、夫が、あるいは自分自身が、前述のフネさんのようにある日突然動けなくなってしまったら。そんな事態に直面する前に、取りうる手段を検証しておこう。
何よりもっとも避けたいこと、それは少ない選択肢の中から慌てて終の住処を選びとることである。介護は在宅にしろ施設にしろ、すべて一長一短だ。どの形態が自分や家族にとって一番幸福な結果をもたらすのかは、しっかり検証しなければならない。本当に安心して暮らせる余生はどこにあるのか、介護に詳しい3人の専門家に話を伺った。
まず介護される側が一番望むのは、何といっても在宅介護だ。「死ぬときは自宅の畳の上で」という願いは、当然ながらそれまでの介護の日々も自宅でということを意味している。しかし、これはあくまで介護される側の希望である。介護する側の視点に立つとどうなるのだろう。
都内で訪問介護事業を展開しているケアリッツ&パートナーズの代表、宮本剛宏氏に、在宅介護のメリット・デメリットを聞いてみた。
まずメリットは金銭面の安さである。
「通常、在宅介護は寝たきり状態になると難しいといわれていますが、実際は介護度5でも可能です。介護保険が35万円まで出るので、1日3回、1時間ずつヘルパーに入ってもらい排せつや食事の介助を頼めば十分やっていけるのです」