「かつては動きの鈍い労基署が多かったのですが、ある監督官は『最近は世論の高まりもあって、動かざるをえない』と漏らしていた。その点では以前より労基署は力になってくれるはず」(横張弁護士)
労基署への相談は強力な切り札。ただ、騒ぎが大きくなれば、まわりに「あいつはトラブルメーカーだ」という印象を与える恐れもある。転職先が決まっていないと、就職活動に支障をきたすこともある。カードを切るタイミングには要注意だ。
いずれにしても未払い残業代請求のタイミングは慎重に考えたい。賃金の請求権は時効によって2年、退職金は5年で消滅すると定められている(労基法第115条)。退職後、次の職場で落ち着いてから請求してもいいが、時期が遅れるほど請求できる金額が減ることもある。
「金額の問題だけではありません。証拠集めの難しさや他の社員への影響力を考慮すると、在職中に請求したほうが有利。ただ、早すぎると緊張関係が生まれて、退職するまで働きづらくなるデメリットも」(横張弁護士)
未払い賃金の請求は、早すぎても遅すぎてもよくない。一般的に退職届を出すと同時に交渉を始めるケースが多いが、自分なりにベストのタイミングを見極めたうえで請求したい。