現在、非正規社員として働いて、国民年金に加入している人は、厚生年金にも加入できる働き方に変えるべきです。出産で退職した人も同様です。厚生労働省によると、18年2月の正社員の有効求人倍率は1.07倍です。仕事を探す人よりも求人の数が上回っているのです。6年前には0.49倍でしたから異常ともいえる高さです。こんな状況が長く続くとは思えません。
特に団塊ジュニア層が就職した1993年のころは就職氷河期といわれ、仕事を見つけるのに苦労をしました。やむを得ず非正規社員として働いている人は「正社員になるラストチャンス」と考えて、厚生年金に加入する立場を手に入れてください。
同様に、正社員として働いている人も転職して収入を増やすチャンスです。収入が増えれば、厚生年金の保険料もアップしますが、年金額を増やすことにもなります。
一方、起業したい人は、年金についても戦略的に考えておくべきです。必然的に厚生年金を外れることになるため、起業後になるべく早く法人化して自分も厚生年金に加入し、その負担ができる組織にしてください。
最後は、できるだけ長く働くこと。60歳でリタイアした場合、25年ほどのセカンドライフが待っています。その間、年金と貯蓄の取り崩しで生活するのは困難です。総務省の「家計調査年報」(16年)のデータを見ると、世帯主が60歳以上の無職世帯の生活費は、月約6万円の赤字になっています。これが25年続けば不足額は1800万円に上ります。1年でも長く働くことは、老後の不足額を減らす賢い選択でもあるのです。
働いている間は年金の受給開始を繰り下げることもできますから、そう手続きすれば仕事を辞めたときに受け取る年金額を増やせます。70歳まで繰り下げて受給すると、65歳から受給した場合と比較して年金額は42%も増額します。
公的年金は、老齢、障害、死亡によって要件を満たしたときに給付が受けられる制度。給付の種類には、国民年金に老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金、厚生年金保険に老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金などがある。
フィナンシャル・ウィズダム代表
退職金、年金制度、資産運用が専門。連載12本を数える人気コラムニスト。著書に『読んだら必ず「もっと早く教えてくれよ」と叫ぶお金の増やし方』など。