「内輪だけ」の盛り上がりは、ときに身を滅ぼすリスクをもたらす。昨年、13匹の猫を虐待する様子を撮影し、ネットに動画を公開していた元税理士が、動物愛護法違反で逮捕され、有罪判決を受けた。なぜ犯罪の動かぬ証拠を、ネットで公開していたのか。人間を暴走させる“承認欲求”の怖さとは――。

13匹の「虐待動画」をネット上で公開して、お縄

※写真は本文とは関係ありません。 写真=iStock.com/Bliznetsov

昨年12月、ノラ猫をいたぶって殺害したりケガを負わせたりして、動物愛護法違反の疑いで起訴された元税理士(52)の初公判。東京地裁前に定員30名ほどの傍聴券を求めて300人以上が集結したのもすごいが、抽選に外れた人たちが去ろうとせず、公判が終わるのを待っていたのには驚かされた。

大半が女性で、猫をモチーフにしたバッグやアクセサリーを身につけている人も多い。近くで様子をうかがうと、団体で押しかけたのではなく、少人数のグループが主流のようだ。マスコミが注目するような事件では傍聴希望者も殺到するが、抽選に外れればクモの子を散らすようにいなくなるのが普通。それなのに、こんなに残っているのはなぜか。聞き耳を立てているうちに、立ち去りがたい心情がわかってきた。

事件の概要はつぎのようなものである。

<被告人は2016年3月~2017年4月にかけて、わななどで捕獲した猫に熱湯をかけたり、ガスバーナーであぶったりして9匹をショック死させ、4匹にけがをさせた。また、虐待する様子を動画撮影し、インターネット上で公開。虐待を繰り返すうちに虐待に楽しみを覚え、動画をネットで公開することが目的化していた>

▼全国の愛猫家が集結「執行猶予付判決許すまじ」

残虐性の高さもさることながら、その様子をネットで公開したことで発覚したのが、この事件の特徴だ。被告人は罪を認めているので争点らしきものはなく、初公判の今日、一気に求刑まで行われる可能性が高い。

しかし、動物愛護法違反の罪は<懲役2年以下、罰金200万円以下>。違反といってもさまざまなレベルがあるだろうが、このようなひどい事件が起きることを思うと「軽いな」という印象だ。

しかも、被告人は初犯なので、執行猶予付判決になるのではないかと目されている。怒っているのは裁判所前の人たちだけではない。事件にショックを受けた全国の愛猫家やペットを家族のように愛する人たちはネットで署名を集め、被告人に実刑を与えるよう裁判所に嘆願書を提出した。その数は16万人以上に達したという。SNSがエスカレートさせた犯罪行為に怒った人たちが、SNSを使って結集し、動物虐待家にプレッシャーをかけているのだ。