結局、廃業した税理士「害獣駆除だから犯罪ではない」

ロビーで公判が終わるのを待っていると、さっそく情報が回ってきた。検察の求刑は1年10月。

いったいどこに2カ月減らす酌量の余地があるのだ、とそばにいたグループが憤慨している。執行猶予付判決が下れば被告人が同じ行為を繰り返すのではないか。実刑にならないとなれば、虐待する人間が後を絶たないのではないか。それを防ぐためにも、法律の許す範囲でもっとも厳しい罰を与えるべきなのに、と嘆いていた。

※写真は本文とは関係ありません。写真=iStock.com/leminuit

判決は懲役1年10月、執行猶予4年(税理士の仕事は廃業)。予想通りの結果といえるが怖さは残る。

被告人は当初、猫殺しについて「害獣駆除だから犯罪ではない」と開き直っていたという。もし、生き物をいたぶって殺すことに快楽を感じていたとしたら、最悪、対象が人間にエスカレートすることだってあるかもしれない。

そういう意味で、筆者が気になったのは初公判で結審、次回判決という、この裁判の素早さだった。被告人がもともと持っていたであろう残虐性を、フルに発揮させることになったSNSの魔力について、踏み込んだやり取りが行われなかったのは残念だ。

▼なぜ、税理士は犯罪の証拠をネットで公開したのか

それにしても、なぜ被告人は虐待している動画を次々にネットにアップしたのだろう。子どもじゃあるまいし、ガスバーナーで猫を焼き殺す動画が犯罪の証拠になることは、少しでも冷静さがあれば気づくはずだ。

被告人が動画をアップしていたのは“動物虐待家”が集まるネット掲示板。アップした動画を虐待家たちに絶賛され、次第にエスカレートしていったらしい。ひどい動画を投稿するたびに有名になり、「神」と持ち上げられ、ネット上の“オーディエンス”の期待と要望に応えるべく、つぎの獲物を探すようになっていったようだ。

犯罪行為と知りつつ調子に乗った、いや周囲に乗せられたというべきだろうか。いわゆる“承認欲求”が満たされるというやつだ。仲間内でこっそりやっていたつもりなのだろうが、これだけの内容をネットで公開すれば、発信元がバレるのは当然のこと。社会人にもなって、どうしてそんなことに気づけないのかと誰もが首をかしげるに違いない。くだらない自己満足のために犠牲になった猫がふびんだ。