戦わずして、無力化される日本

一方で、諸外国は先を行っている。中国は、すでに対ドローン兵器を実戦投入している。例えば、2017年2月19日、アラブ首長国連邦で開催された「アブダビ防衛エキスポ」で、中国企業の保利集団は対空レーザー兵器「サイレントハンター」を展示した。サイレントハンターは専用の中型トラックに搭載され、低速の小型ドローンを迎撃する兵器である。驚くべきはこれがすでに実戦配備されていることだ。16年9月に中国・杭州で開催された20カ国・地域首脳会義(G20サミット)では、本システムが防衛用に配備されていたのだという。

性能もなかなかのものである。射程は最大4キロで、800メートル離れた厚さ1センチの鋼鉄、1キロ先の厚さ5ミリの鋼鉄を撃ち抜くことができる。そして、これらはレーダー、光学・電子センサー、索敵・追跡システムと一体となって運用されているのだ。保利集団の関係者はメディアの取材に、海軍艦艇用と同様のより強力なレーザーを発射できるバージョンを開発中だとコメントした。

また、中国人民解放軍は17年11月、要地近距離防空システム「国蓉1号」の試験を行い、数百メートル先から低空で侵入するドローンを10秒かからずに撃墜にも成功した。ほかにも多くの対ドローンレーザー兵器を実運用していると見られる。

米国も負けてはいない。すでにドローンを電子的に撃墜する「ドローンディフェンダー」をイラクやアフガニスタンの前線に投入しているほか、飛来するドローンを探知できる様々なレーダーや装備を開発している。

また米・国防総省は17年8月、国内130以上もの米軍基地に対し、脅威と認識すれば民間ドローンであっても撃墜・捕獲を許可する権限を付与した。軍の高官らも繰り返し民間ドローンの軍事転用を脅威と見なす発言をしているほか、米・国土安全保障省が最新のテロ報告にて「テロリストが武器として無人機の活用を追求している」と表明するなど、国としてのドローン攻撃に対する強い危機意識がうかがえる。

今からでも遅くはない。速やかなドローン規制法の改正と自衛隊への対処装備の導入が必要だ。このままでは、日本は戦わずして、主力兵器を中国なり北朝鮮のドローン攻撃によって無力化されかねない。また、海外派遣時に自爆ドローンが自衛隊を襲ったらどうするのか。

法律上ドローンを自由に飛ばせてしまう主な自衛隊施設

※航空法、ドローン規制法ともに適用外

▼陸上自衛隊
札幌弾薬庫:北海道
日出生台演習場:大分県
祝園弾薬支処:京都府
湯布院駐屯地:大分県
宮古島駐屯地および弾薬庫予定地:沖縄県
与那国駐屯地:沖縄県

▼航空自衛隊
東北町弾薬庫:青森県
高蔵寺弾薬庫:愛知県

▼海上自衛隊
舞鶴弾薬整備補給所:京都府
呉弾薬整備補給所:広島県


※日本を攻撃しようとする敵や愉快犯が法律上自由にドローンを飛ばせてしまうという自衛隊基地。一刻も早い政府見解の変更、法改正等がなければ大きな事態に発展しかねない。

(写真=iStock.com)
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