スティーブ・ジョブズ的な感性が武器になる
製造業では収益構造を表す曲線を「スマイルカーブ」と呼びます(図)。日本企業は収益性の低い組み立て・製造部分は強いのですが、収益性の高い研究開発部門とマーケティング部門は弱く、なかでも自社製品を他社製品と差別化していくブランディングが不得手です。ブランディングもAIでは難しい、感性が重要となる領域です。
▼AI時代には「変人」が生き残る
アップルの創業者スティーブ・ジョブズは、禅をやったり、ヒッピー生活を送ってみたり、技術ではなく「感性」の人でした。ジョブズは大学を中退してゲーム会社アタリに入社しましたが、風呂には入らない、野菜しか食べないといった変人ぶりで、周りから嫌われていたようです。そのため当時のアタリの社長はジョブズを夜間勤務に回して、周囲とぶつからないよう隔離したのです。無理をしても、変人のジョブズを社内に囲おうとしたわけです。
日本では以前から周囲に合わせようとしない人間は嫌われてきましたが、中学・高校の時代からLINEで育ってきたいまの学生たちは、周囲から浮くことをことのほか恐れます。大学でも、昔はいたであろう変人の部類の若者はほとんど見当たりません。それだけ変わり者は貴重になっているわけで、これからの時代の企業は、「変人をいかに囲うか」を意識して考えるべきかもしれません。
駒澤大学経済学部准教授。1975年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、IT企業勤務を経て早稲田大学大学院経済学研究科にて博士号を取得。2017年4月より現職。専門はマクロ経済学、貨幣経済理論、成長理論。AI社会論研究会の共同発起人をつとめる。