人気選手の批判をしない日本のスポーツ記者

時津風部屋新弟子リンチ殺人事件をスクープしたのは「週刊現代」だった。八百長問題を長年追い続けてきたのも「週刊ポスト」と「週刊現代」で、野球賭博問題も早くから追及していた。スポーツ紙やテレビは、事件化してから書き出したのだ。一般紙もしかりである。

私が以前、イギリスに滞在していた時、スポーツ紙が、前日のアスコット競馬場のレースで、武豊が無様な乗り方をしたことを、一面で批判していたのを読んだことがある。日本の競馬記者が、武やクリストフ・ルメール、戸崎圭太の騎乗ミスを批判したことなど、私が知る限りない。

競馬は命の次に大事なおカネを賭けているのだ。馬の上に人間が乗って走るのだから、致し方ない。そうではあるが、明らかな騎乗ミスで人気馬が惨敗することがある。勝った馬は偶然でも、負けた馬の騎手の乗り方には理由がある場合が多い。

批判のないところに進歩はない。日本の記者クラブには問題が多いが、中でも最たるものが官邸のクラブと、各スポーツのクラブであると、私は思っている。

貴乃花がモンゴル力士に注ぐ厳しい目

今回の騒動を見ていると、これは私の推測だが、モンゴル勢と貴乃花親方には、お互い思うところがあったのであろう。

たしかに、モンゴル力士たちは、相撲の世界にはあってはならないほどつるみ合い、酒を飲みかわすなど、一歩間違えれば「八百長」ではないかと疑われる所業が多いようだ。

それを快く思わない「ガチンコ親方」の貴乃花だったが、貴ノ岩だけは、その素質にほれ込み例外的に弟子にした。その代わり、モンゴルの連中とはつき合ってはいけないと厳しく申し渡していたという。

貴乃花親方が自分たちを厳しい目で見ていることをモンゴル力士たちもよくわかっていた。そこで、機会があれば、貴ノ岩を呼び出し、モンゴル出身力士としての心得をわからせ、貴乃花親方への腹いせにしたかったのではないか。

貴ノ岩が知人に、会合へ行く前に「何かいわれる」という予感を抱いていたと語っているようだが、それは、錦糸町で「これからは俺たちの時代だ」といったことだけではなく、入門以来続いていた、親方の確執の礫(つぶて)が、いつか自分に向けられることを予期していたからではないか。