18時定時退社のIT企業も

ゲーム業界全体ではどうか。

「カプコンは成果を問われるが、入社後に段階的に給与が上がっていく仕組みで年輩者も多く、人を囲いこむ会社。一般的にゲーム業界は『給与は低くてもここで働きたい』という人が少なくない」(同)

キラキラ系ブラックは定期昇給がなく、仕事に給与が張り付く職務給型の賃金制度を導入している企業が多いが、ネット広告業もその1つ。ネット広告企業の人事部長は給与の仕組みについてこう語る。

「給与は年齢に関係なくばらつく。30歳で年収400万円弱の社員から800万円の社員、40歳で年収400万円の社員から1500万円の社員までがいます。例えば30代で年収600万円をもらっている社員はまずまずいます。ただ、年収600万円以上の価値を出せる仕事をする人があまりいないので、そこから年収800万円には到達しづらい」

人事部長自身はキラキラ系ブラックとは思っていないという。

「ブラック部署もあればホワイト部署もあります。ある部署はそれこそ夜の9時、10時まで働いて年収800万円を稼いでいる社員も多くいます。一方、定時に帰ることが許されている部署もある。そこにはマネジャーを除いて、40歳を過ぎても年収400万円の社員もいます。会社としては400万円の価値を果たし、本人がそれでよいと思うのなら追い出すつもりはないし、いてもらっても一向に構いません。考えようによっては夫婦共働きで夫が年収400万円、妻が年収400万円で世帯収入は800万円。しかも毎日6時に帰る。余裕のある生活ができるし、それも“アリ”だと思います」

キラキラ系ブラックに含まれるサービス業の中には、実はホワイトと呼べる会社があるのもわかった。長時間労働で書類送検されたドン・キホーテのグループ企業の中には「比較的ルーティン業務の多い会社ですが、社員のほとんどが定時に帰り、店舗の仕事とは真逆なので驚きました。ただし給与は30歳前後で400万円と安い」(大手人材紹介会社の転職コンサルタント)。

キラキラ系ブラックに隠れて目立たないが、地味ホワイトである機械部品メーカー人事部長は自社の魅力をこう語る。

「確かに大手ホワイトに比べると30歳で500万円弱、40歳過ぎの課長でも800万円を超えることはないが、50歳まで平均4000~5000円の定期昇給があり、寮・社宅も完備しています。規模は小さいが、その分個人の仕事の裁量が大きく、いろんなことを経験し、キャリアを積むこともできます。役職定年も57歳と大手よりも遅いし、長いスパンでキャリアアップを図れる。何より同僚や先輩が熱心に面倒を見てくれるし、愛に溢れているんです」

こう力説する人事部長だが「うち以外にソフトバンクなどの入社面接を受けている学生は、そちらに内定するとうちにはまず入りません」と嘆く。

地味ホワイトの魅力は給与の額面だけではない。国内有数の試薬メーカー、関東化学元社員は「福利厚生が充実しています。住宅、家族手当などの手当のほか都内の借り上げ社宅の個人負担も2万~3万円程度です。営業担当者には背広手当として月2万円が支給されていました。住宅融資や財形貯蓄もあり、退職年金も今流行の確定拠出年金ではなく、確実にもらえる企業年金に入っていました」と語る。

額面の給与はそれほど高くなくても背広手当が月2万円プラスされれば、年間で24万円。

就職・転職先を探している人はまず年代別のモデル賃金を担当者から聞き出すこと。そして隠れた給与の福利厚生もチェックして、自分に見合った会社を選ぶといいだろう。

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