記事に添えられていた画像には、現場となった交番の外観が映し出されている。これが道警の“逆ギレ”を招いたようだ。事情を知る記者に詳しい話を聞くと、出禁の理由は2つ。1つは「被害者感情」で、1つは「誤報」だという。前者は、現場の交番があきらかになったことで被害者が特定され、二次被害を招くという理屈。後者は、加害者への制裁が懲戒処分ではなく監督上の措置なので「処分」という言いまわしは誤っているという理屈だった。
「出入り禁止」は事実なのか
NHKは、情報を掴んでから放映に至るまでに何度も裏づけ取材を試みたらしい。それに対し、道警は「何も言えない」の一点張りで、しまいには「打つな」と言ってきたという。聞いた私は、その年の春に監察官が口にした「書いていいとも書くなとも言えない」のセリフを思い出した。やはり警察は、記者に対して「書くな」ということがあるのだ。あまつさえ、出入り禁止という措置をとることもできるのだ。
民放局関係者の1人からは、こういう証言を得た。
「何カ月か前にも地元民放が出禁になりましたよ。暴力団が市内の倉庫に大量の銃器を隠してるっていう話を、当局の意に沿わないタイミングで出したんですね。そういう個別のケースだけでなく、情報を統制したがる体質は道警全体に及んでます」
道外の複数の県で警察取材を経験してきたという30歳代の新聞記者は、割り勘で誘った焼鳥屋さんでビールジョッキを握り締めながらこう吐き捨てた。
「警察にとって都合悪いことを書いたら睨まれる、ぐらいのことは多かれ少なかれどこの県でもありますよ。しかし北海道警はあまりに露骨。度が過ぎてます。不祥事に限らず、普通の夜回りにもマトモに応じなかったり、会見開いておきながら何も答えなかったり。道警でサツ回り経験したらどこの県警でもやっていける、って言われてるほどですよ」
当初「無期限」とされていた出入り禁止騒動は、結果として9日間で収束した。道警幹部がNHKに対して上層部同士の「話し合い」を打診し、その席が持たれた夜に出禁が解除されたのだという。現場不在の「手打ち」と言ってもよい結末だった。