罪がどんどん軽くなる

口を開けて固まっている場合ではなかった。被害者のいる未発表事件は、それだけではなかったからだ。

不祥事記録の開示請求を始めて2年めになるその年、私は四半期ごとに直近の『一覧』を請求し始めていた。「2行」の裏が気になったケースについては、追って『事件指揮簿』などの開示を求める。今も続く3カ月ごとの恒例行事で、始めたばかりの春にさっそく強い関心を惹かれる事案に突き当たった。

同年1月13日に「減給」処分を受けた巡査の「強制わいせつ事案」は、『一覧』では21文字にまとめられていた。

部内異性に対し、強いてわいせつな行為をした。

「部内異性」とはつまり、警察官の同僚ということだ。6月1日付で開示請求し、同20日に入手した『方面本部長事件指揮簿』では、確かに被害者の職業が「警察官」になっている。

その『指揮簿』に記された事件名は、どういうものだったか。

警察官同士の強姦未遂事件

刑事部長以下7人の決裁印が残る書類に、はっきり「強姦未遂」と記録されている。さらに『犯罪事件受理簿』を紐解くと、「罪名(手口)」という欄にごくシンプルな2文字が綴られていた。

強姦

事件は、受理された時点で「強姦」として扱われた。捜査着手後、それは「強姦未遂」となり、さらに容疑者の懲戒が決まった時には「強制わいせつ」に変わっていた――。

これもすべて、被害者の「権利・利益」を保護するために隠されているのか?