愛人がいたことが妻や会社にバレて崖っぷち

妻子がいるのに愛人を作り、愛人の浮気を疑って暴力沙汰を起こす。刑事事件の被告人になってしまい、家族に不倫がバレる。被害者の浮気が事実だったとしても、どこにも同情できるところがない事件だ。

写真はイメージです

被告人は罪を全面的に認め、現在は保釈中。前科前歴がないことや被害状況から考えて執行猶予付き判決が出るのは確実だが、人生の岐路に立たされているのは間違いないだろう。

弁護人も厳しい口調で言う。

「被告人は被害者に謝罪し、治療費として50万円を支払いましたが、それで許されるものではありません。今回の後始末は、本人、相手である被害者、妻との間で話し合いを持つなどして、やっていかなければならないですよ」

もっともな意見である。色恋沙汰は当事者間で解決してもらうのが一番だ。

▼訴えてきた不倫相手にも「感謝」

それより、筆者には他に気になることがある。こんな事件を起こしておきながら、被告人には過剰にしょげかえったところがなく、平常心を保っているように見えるのだ。開き直っているのではなく、反省しつつ今後の人生について前向きに考えているような雰囲気と言えばいいだろうか。

なぜそう思ったのか。傍聴時のメモを読み返すうち、被告人には“断言と感謝”をセットにして発言するクセがあることに気がついた。たとえば、「被害者を蹴ったことをどう思うか」と尋ねられたときの答えはこうだ。

「ケガまでさせるなんて、ひどいことをしました。訴えられて当然だと思います。二度とこのようなことをしないと誓わせてくれた被害者には、申し訳ないと思うとともに感謝しています」

「妻子に言いたいことはあるか」との質問にはこう返す。

「謝って済むことではないと思っています。軽蔑されても仕方がありません。保釈中の私を家に入れてくれただけでもありがたいです」