「前向きに仕事に臨んでいる仲間のほうが多い」
しかし、ケアマネージャーのIさんは言います。
「そんなことはないと思いますよ。私自身、介護は魅力ある仕事だと思っていますし、やりがいを感じて前向きに仕事に臨んでいる仲間のほうが多いのではないでしょうか」
もちろん、介護業界に職を得ても、すぐに音をあげて辞めてしまう人も少なくないそうです。でも、長く続く人は介護の仕事だからこそ味わえる喜びを感じているはずだというのです。
そこで今回は「介護の仕事のどんな部分に魅力を感じるのか」を聞いてみました。ケアマネージャーのYさんは「自分が人のお役に立っているのが実感できることです」と言います。
「担当した利用者さんの状態が目に見えて良くなることがあります。初めてお会いした時はベッドから体を起こすのがやっとだった方が、私が作成したケアプランに沿った介護サービスを受けることによって、1カ月ほどでベッドから立ち上がり、ゆっくりですが歩けるまでになったことがあるんです。また、当初は要介護になったことを悲観してうつ状態だった方が、状態が好転するにつれて生きる意欲を取り戻すこともあります。その変化を生んだのはサービスを提供した人たち、ホームヘルパーさんや、デイサービスのスタッフ、リハビリを行う療法士さんの力が大きいわけですが、ケアプランを作った私も確実に関与している。それがうれしいんです」(Yさん)
利用者側にとって老親など家族が快方に向かうことほど、うれしいことはありません。だから当然、担当してくれる介護職のスタッフには感謝の言葉を述べます。Yさんは、その意が伝わってきた時、大きな喜びを感じ、仕事への意欲につながると言います。
介護職は「すごい感動を味わえる仕事」
一方、Iさんは「すごい感動を味わえることがあるんです」と言って、ひとつのエピソードを語ってくれました。それは、特別養護老人ホームに勤めていた時のこと。当時85歳だった女性の入所者から次のような願い事を打ち明けられたそうです。
「私の幼い頃からの夢はピアノを弾くことなの。でも、かなえることができずに今日まできてしまった。よかったら教えてもらえないかしら」
聞けば、実家は貧乏でピアノを習うことは困難だったそうです。結婚して2人のお子さんができたのですが、夫が若くして大病を患い、女手ひとりで家計を支えることになったそうです。仕事と夫の看病、そして子育て。自分の夢など考える余裕などない日々を送ってこられたそうです。
「そうして月日がたち、子どもさんは独立し、ご主人を看取り、いま、自分は特養にいる。ここで自分の“夢”を思い出した。その施設でピアノを弾けるのは私だけだったので、教えてくださいと依頼されたわけです」(Iさん)