顧客ニーズに合わせ「競争を避けよう」というと、「そんなの軟弱だ。頑張って勝ち取った勝利にこそ意味がある」という人が必ず出てきます。まさに服部タカシのような「頑張ること」に価値を見いだしてきた人たちです。しかし下の世代から見れば今や「老害」と見られかねません。

「あなた」にもブルーオーシャンが必要

現代では「レッドオーシャン」で競争を続けても得られるものはまったくありません。求められているのは、「ライバルと戦わず、顧客に集中すること」です。成熟した社会だからこそ、細分化したニーズに特化し、戦いを避けるべきなのです。このような市場を、獲物を狙うサメがいない真っ青な海にたとえて「ブルーオーシャン」と呼びます。

レッドオーシャンで戦い続けるか、ブルーオーシャンで無競争を狙うかは、あなたの価値観次第でしょう。私の提案は言うまでもなく「ブルーオーシャンを狙うこと」です。

ブルーオーシャンで生きるために必要なことは「あなたという商品の価値を高めること」です。レッドオーシャンでひたすら頑張ることだけを続けてきた服部タカシは自分自身でビジネスパーソンとしての「商品づくり」がまったくできていないことが問題です。

役員になった彼の同期との違いはここにあります。役員になった同期は、彼らなりの「売り」となる「自分という商品づくり」を実現していきました。彼が「地方の営業所でノンビリやってきた」と思っていた同期は、実はその地域の顧客に特化して長年コツコツと実績と信頼を積み重ね、「顧客の現実を知り尽くした営業」が売りになっています。同じく「休みをしっかり取って旅行ざんまい」と彼が思っていた同期は、世界中を旅しているうちに独特の世界観を身につけて、独特の視点による深みが仕事にも生かされています。

一方で、彼の売りは「ひたすら頑張ること」だけ。高度成長期には「優秀な兵隊」として必要とされましたが、現代は「働き方改革」で長時間勤務よりも高い生産性を求められる時代です。かつての「武器」が、会社にとってはただの「リスク」に落ちたのです。

ブルーオーシャンで成功するためには、「自分という商品の売り」を作ることが必要です。私が書き下ろした新刊『「あなた」という商品を高く売る方法』(NHK出版新書)では、最新マーケティング理論をベースにして、誰にでもわかりやすく理解できるように、「自分という商品づくり」を考える方法論を紹介しています。

私はこれまでシリーズ60万部超の『100円のコーラを1000円で売る方法』(KADOKAWA)、10万部超の『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』(SB新書)などマーケティングの専門家として本を執筆してきましたが、新刊では、マーケティング理論を「自分という商品づくり」に応用する手法を徹底して解説しています。ぜひ参考にしてください。

永井孝尚(ながい・たかひさ)
マーケティング戦略アドバイザー
1984年慶應義塾大学工学部卒業、日本IBM入社。マーケティング、人材育成を担当。2013年に退社し、マーケティングの本質を伝える講演や研修に従事。主な著書に、シリーズ60万部の『100円のコーラを1000円で売る方法』(KADOKAWA)、10万部の『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』(SB新書)などがある。
関連記事
30年間も"自分探し"を続けた50代の末路
ポスト争奪に巻き込まれるより、息長く働く人が勝つ
なぜ課長昇進が早かった人は役員になりにくいか?
「残業しないと気持ち悪い人」の心のメカニズムとは?
出世コースを外れても“定年まで生き残る”3つの方法