『あさイチ』は、『ゲゲゲの女房』と同時期にはじまったNHKの情報番組だ。NHKアナウンサーの有働由美子とV6の井ノ原快彦、NHK解説委員の柳澤秀夫がキャスターとして名をつらねた。井ノ原が生放送であることを利用し、朝ドラを観て誰かと感想を分かち合いたいと思っている人のために、直前に放送された回の感想を語りはじめたことが、視聴者の関心を呼んだとされる。それがいつの間にか「朝ドラ受け」と呼ばれて定着し、視聴者もそれを期待するようになった。

「朝ドラ受け」の開始から7年

なかには、朝ドラとは別番組であるにもかかわらず話題を持ち込むことをよしとしない視聴者からの批判もあって、必ずしも毎日、「朝ドラ受け」をするとは限らないが、「朝ドラ受け」の開始から7年経った2017年現在もなお、それは続いている(ツイッターでは、朝ドラの感想だけでなく、朝ドラ受けに反応してつぶやく人も多い)。

なお、2011年に、映画界で活躍していた渡辺あやを脚本に起用した第85作『カーネーション』がはじまると、今度は流行りの映画やドラマを好む層が新たに朝ドラに流入してきた。こうして、従来の朝ドラ視聴者とは違う層が徐々に増え、それがようやく視聴率として結果に表れたのが、2012年の第86作『梅ちゃん先生』(脚本:尾崎将也)だ。『梅ちゃん先生』では、SMAPが歌う主題歌(「さかさまの空」)も注目され、平均視聴率はついに20%台を回復。同年の第87作『純と愛』は、ジャニーズの風間俊介の出演が決まり、脚本に視聴率40%超えを果たした民放のドラマ『家政婦のミタ』(日本テレビ)の遊川和彦を起用し、『ちゅらさん』で好評だった沖縄を再び舞台に設定するなど、かなり力の入った企画だった。風間めあてに観はじめた女性視聴者も多く、「あま絵」画家で、後に第91作『マッサン』(脚本:羽原大介)のコミカライズ(扶桑社)を担当する漫画家のなかはら★ももたも、そのひとりだった。

『純と愛』の絶望を引き受けた 『あまちゃん』

なかはらが朝ドラを観るようになったのは、『純と愛』からで、主人公たちのあまりに絶望的な人生にショックを受けたという(それと同じような視聴者が続出したが、その内容はここでは明かさない。未見の方は機会があればDVDをご覧いただきたい)。この衝撃的な作品が生まれたのは、2011年に起きた東日本大震災を受けてのことだと脚本家の遊川和彦はいう。なぜあえて悲劇を突きつけたのかを聞くと、次のように答えてくれた。

<震災によって、いくら頑張ったって、不公平な不幸は襲ってくるんだってことがわかったわけじゃないですか。『いつか自分にも不幸が襲い掛かってくるかもしれない不安』と闘うことは大きなテーマですね>

<「なんでこんなにひどいことばかり起きるの?」って、たいへんなおりを受けました。でも、それで救われたという人も確実にいるわけなんです。最終的には、試練に耐えている人と人が出会って助け合うようなところに行き着かせたいんですよ> (『週刊SPA!』2017年2月7日号)

こう語る遊川の気持ちもわかるが、その願いは残念ながら、大半の視聴者に届かなかった。だが、彼の言う「一人で生きることなんてできないんだ」というメッセージは、その後の朝ドラに大きな意味を及ぼしたと筆者は考える。 みんなで楽しむ朝ドラに 『純と愛』がもたらした絶望のはてに放送がはじまった第88作『あまちゃん』は、「一人で生きることなんてできないんだ」という『純と愛』の想いを引き受けたといえるだろう。 『あまちゃん』のストーリーやその考察に関しては第11章で詳述するが、2010年以降の朝ドラの人気を高めたのは、内容そのものや時間帯の変更のみならず、「一人でなく、みんなで楽しむ」というスタイルが確立されたことも大きく影響している。