子育てに失敗したら、親の価値はゼロと思い込む
さらに、ある母は私に泣きながら、こう言ってきた。
「小学校受験をするために努力を重ねてきたが、ご近所さんに児童相談所に通報されてしまった」と。そして、最後にこう言った。「それでも、私はこの子の将来のために、金メダル(=名門小学校合格のこと)がほしいんです!」
2月ごろ私の元に来るメールでは、毎年こういうものが多い。
「中学受験に失敗しました。もう、この子の人生は詰んだも同然です」
中学受験したすべての学校に不合格だったわけではなく、ちゃんと合格している学校もあるのに母の心は敗北感で埋め尽くされていたのだ。
これらはすべて「失敗は許されない」という強迫観念に由来するものであろう。ひとり、ふたりしかいない子育てに失敗でもしたら、自らの母親としての価値がなくなるかのように捉える、追い詰められている母は多いのだ。
こぼす前に「こぼすんじゃないよ」と子に怒声を浴びせる親
こういう不安要素の塊のような母たちにじっくりと話を聞いてみると、見えてくるものがある。彼女たちもまた「異様に失敗を恐れる」または「失敗そのものを許さない」という親の元で成長しているケースが多いのだ。
たとえば、幼き日、何かの液体をこぼすまいと容器を持っているとしよう。すると、頭上から親の「こぼすんじゃないよ!」との怒声が飛んでくる。まだ、こぼす前にもかかわらず。
このように、失敗する前から、まるで失敗したかのような対応をされて育っている。
そこで本当にこぼそうものなら、親からのさらなる叱責と失望と否定の態度と言葉を同時に浴びせられ、こぼすことなく着地に成功しても、賞賛の言葉はかけられない。