これから生活支援ロボットを順次投入

実はトヨタがロボットを開発し始めたのは古く、その歴史は1970年代に遡る。といっても、当時のロボットはパートナーロボットではなく、溶接や塗装を行う産業用ロボットが中心だった。それが2001年の時に大きく変わった。そのきっかけになったのが「2005年日本国際博覧会(愛・地球博)」で、トヨタはそれまで蓄積した産業用ロボットの技術と自動車の制御技術、そして最新のITテクノロジーを集結し、万博に向けたロボット・プロジェクトを立ち上げた。

そして誕生したのが二足歩行型ロボット、二輪走行型ロボット、搭乗歩行型ロボットの3種類。なかでも二足歩行ロボットと二輪歩行ロボットは話題となった。なにしろ、トランペットを吹いたり、ドラムを叩いたりと楽器を演奏したからだ。当時、開発者の一人は「道具を使うという観点から開発を進め、楽器を演奏できる人工唇をつくり、人間の唇の振動を再現した」と話していた。

その後2007年には、「トヨタ・パートナーロボット構想」を発表。「介護・医療支援」「近距離のパーソナル移動支援」「製造・ものづくり支援」「家庭内での家事支援」という4つの領域で人と協調するロボットを開発するとした。そして、モビリティロボットとバイオリン演奏ロボットの2体を披露し、翌年にはパーソナル移動支援ロボット「ウィングレット」を発表した。

しかし、これらのロボットは試作ロボットという位置づけで、まだ販売できるものではなかった。そういう意味では、今回のリハビリ支援ロボットが市販するロボットの第1弾となる。トヨタでは今後、対話ロボット、立ち乗りパーソナルモビリティ、バランス練習アシスト、生活支援ロボット、移動ケアロボットなどを順次実用化していく計画だ。もちろん、これらのロボットには米国シリコンバレーに拠点を置くTRI(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)が開発を進めているAI(人工知能)技術も注入されていく。

このような生活支援ロボットは高齢化や人手不足を背景に必要性が増しており、大手から中小企業まで開発に鎬を削っている。ホンダが歩行支援ロボットを手がけるほか、パナソニックも介護ロボットに力を入れ、筑波大発ベンチャーのサイバーダインは動作支援型のロボットスーツ「HAL」を手がけている。これらのロボットはすでに国際安全規格「ISO13482」を取得しており、トヨタとしても負けてはいられないといったところだ。

ロボット市場は今後急速に拡大すると見られている。しかも、次世代の技術であるAIが絡んでくるとなれば、さらなる需要拡大が見込まれる。トヨタのことだから、おそらく一気呵成に攻勢をかけてくるだろう。そして、“自動車”という名前を捨てた時、トヨタはさらに飛躍した会社になっているに違いない。

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