大学名ではなく「専門性と指導教授」

2番目は、SNSの活用などを活用したダイレクトリクルーティングの増加である。求職者による自発的な応募を待つ姿勢から積極的にアプローチする動きである。

毎年10~20人程度を採用している中小・ベンチャー企業の利用が比較的多いが、大手企業の中でも積極的にダイレクトリクルーティングを手がけている企業もある。たとえば日産自動車は10年ほど前からマーケティング&セールス、商品企画、開発・研究、経理・財務、人事などの職種別採用を実施している。人材要件を明確化し、人事部門と各部門が協力しながら直接大学の研究室やゼミなどに足を運んで学生を獲得するものだ。

面談では専門性だけではなく、将来のリーダー候補としての洞察力やリーダーシップなどのヒューマンスキルも深くチェックしている。たとえば人事部門の採用では経営学や人的資源管理を専門とする研究者のゼミをターゲットにしている。もちろん、HP上で募集・選考する従来型の採用方式も実施しているが、今では新卒採用者のうち、戦略採用が8割を占めているという。

この採用の狙いは大学よりも「専門性と指導教授」にある。また、専門性に関しては、大手消費財メーカーでは「財務、法務、マーケティング、IT」に関する専門性の高い学生を別枠で採用している。

なぜ新卒採用で専門性を求めるのかという質問に対し、同社の人事担当者は「もちろん入社後も徹底して教育するが、グローバルな競争で勝ち抜いていくためには早く一人前になって活躍してもらいたいという思いがある。誰が見ても専門性が高ければ大学は関係ない。大学時代に専攻した学問を究めていれば採用したい」と言い切る。

日本企業はグローバル市場で血道の競争を繰り広げている。欧米企業の社員は即戦力採用が主流だけに専門性も高い。それらと戦うには専門性の高いスペシャリストの養成が不可欠になっているという事情もある。

総合商社をはじめとするグローバル企業では日本の大学卒に限らず、欧米の有名大学や修士課程を学んだ人たちも増えている。東大卒、京大卒といっても優秀だと見なされなくなる傾向もある。大学名にこだわるよりも、大学で何を勉強するのか、指導教授にどんな人がいるのか、さらにグローバル素養を深めるために大学はどんな制度を用意しているのかを見極めて、自分にふさわしい大学を選ぶべきだろう。

(宇佐見利明=撮影)
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