「決断力がないから、内定を勝ち取れない」と罵倒
こうしたプレセスを踏み、「動機をはっきりさせられた人」は、もはやどんなにジタバタしても相手から逃れられない状況になる。
もし、学生が「一度、家に帰って冷静になって考えたい」と言えば、「そんな決断力のないことだから、就職において、内定を勝ち取れない」と言い、「今、勉強を始めないと人生の敗北者になってしまう」と強い口調で攻める。
もし、「契約を親に相談したい」と言えば、「これから社会人として、自立をするはずのあなたが、親に相談することはおかしい」と言う。これから独り立ちする学生にとって、「自立心のなさ」という言葉はとても重く、これにより、周りに相談できなくなる。動機を抑えられた学生は勧誘に対して、どんな断り文句も唱えてもそれを切り返されてしまうことになる。
この基本的な法則では、近年、被害が頻発する架空の金融商品を持ち掛ける詐欺にも、しばしばみられる。
高齢者のもとに、未公開株が購入できる権利を載せたパンフレットが届く。この段階では消費者に金融商品を知ってもらい、「注意」を引くに止める。そして相手に「興味・関心」をもってもらうために、販売業者が電話をかけて、儲かることを知らせる。
そして、さらなる「欲求」を起こさせるため、「その権利を買い取りたい」という別な業者が電話をかけて、さらなる儲け話を持ち掛けて、購買意欲を高めさせる。その際、相手の購入動機をはっきりさせるために、「いかにこの権利を行使することが大事か、権利放棄してはいかにもったいないか」を訴える。また、「被災者のための仮設住宅をつくりたい」などと、相手の人情に訴えかけて、人助けを名目にすることもある。そうやって購入の動機を相手の心に抱かせて、具体的な契約というアクションに至るのだ。
確かに、この法則に則った形で話を進めれば、契約させるための大きな武器になるだろう。しかし問題は、これにどのような魂を入れるかが、大事なのだ。