また、中小規模の地域金融機関は、収益確保の大半を融資業務に頼っている。となれば、貸出金利の引き上げが一番手っ取り早く収益を上げる手段となろう。貸出金利が上がれば、地域経済の活性化という意味では裏目に出やすい。
以上から、これまで日の目を見なかった金融機能強化法の改正法が、その眠りを覚まそうとしている。ただ、金融機能強化法の復活に対しては、経営危機に陥った金融機関を公的資金で救うことへの批判の声が大きい。注入する資金の財源は税金なのだから、当然くみあげられるべき意見だ。銀行の特別あつかいを許さず「つぶれるべきものは淘汰されよ」という、納税者の意思。同法が時限立法であるのも、そのようなモラルハザードを心配する国民感情に配慮してのことだ。
金融庁は、同法による公的資金注入について「国による資本参加」なる表現を用いている。「参加」という間接的な言葉を選んで、批判をかわそうという狙いがあるのだろう。もちろん、本質はなにも変わらないのだが。この言い換えは、4年前に同法が策定された当時の金融担当大臣、与謝野馨衆院議員の指示だという。与謝野氏は、現在も麻生内閣の経済財政担当大臣として、同法改正を推進したひとりだ。これを金融危機救済の有効な施策として位置づけ、政権与党の実績としたい構えといえよう。
同様に、民主党も基本的には公的資金注入制度を置く必要性を認めているため、大きな波乱は起きない気配ではあるが、選挙後の政府が、経営改善の努力をせず淘汰されるべき金融機関にまで血税を注ごうとしていないか、わたしたち有権者は、今後も成り行きを厳しく注視していかなければならない。