思想・哲学の名著20作品一覧

■プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 マックス・ウェーバー著、大塚久雄訳、岩波文庫
営利の追求を敵視するピューリタンの宗教観が、資本主義の成立に貢献したことを検証する論文。作者の比較宗教社会学の原点になった。

■新自由主義 デヴィッド・ハーヴェイ著、渡辺 治監訳、作品社
原著は2005年刊。地理学の権威が新自由主義の政治経済的過程とメカニズムを明らかにする。監訳者による「日本における新自由主義の展開」も収録。

■日本の思想 丸山眞男著、岩波新書
「戦後最大の知識人と謳われた著者を知るための格好の入門書」(姜氏)。日本の思想のあり方を文明論的に考察した論文・講演録が1冊に凝縮される。

■三四郎 夏目漱石著、新潮文庫
大学進学のため、熊本から上京した三四郎を描く、哀感に満ちた青春小説。朝日新聞に連載され、初期三部作『それから』『門』の1作目となった。

■それでも人生にイエスと言う V.E.フランクル著、山田邦男・松田美佳訳、春秋社
強制収容所の体験記『夜と霧』で有名な精神科医が、自らの思想の核心を語り、人生を肯定することを訴えた講演集。平易な言葉で読みやすい。

■職業としての政治 マックス・ウェーバー著、脇 圭平訳、岩波文庫
ウェーバーが第一次世界大戦後、敗北したドイツの若者に語った講演録。政治をめざす人の資格と覚悟を説く。

■マッカーシズム R.H.ロービア著、宮地健次郎訳、岩波文庫
1950年にアメリカで起きた反共運動。その正体が米上院議員マッカーシーの人間分析を通して解明される。アメリカ史上類を見ないデマゴーグを分析。

■世論 上・下 ウォルター・リップマン著、掛川トミ子訳、岩波文庫
メディアの意義や世論の重要性に言及した、ジャーナリズム論の古典。大衆心理が形成される過程がよくわかる。

■代表的日本人 内村鑑三著、鈴木範久訳、岩波文庫
西郷隆盛、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮、上杉鷹山の5人の日本人を取り上げる。英語で西欧に紹介された日本人論。

■文明論之概略 福沢諭吉著、岩波文庫
文明は自らに意味がある――。文明の本質を論じ、日本国が独立するためには、西洋文明に学ぶべきと説く。『学問のすゝめ』と並ぶ福沢諭吉の代表作。

■石橋湛山評論集 石橋湛山著、岩波文庫
戦時中から軍国主義を批判した自由主義者が、ロシア革命、満州事変などについて論評した書。著者は「東洋経済新報」の創設者で、首相も経験。

■こゝろ 夏目漱石著、角川文庫
エゴイズムと罪の意識に苦しむ「先生」を描き、愛と偽善を追求した傑作。

■道徳感情論 上・下 アダム・スミス著、水田 洋訳、岩波文庫
近代社会で利己的個人の平和的共存が可能かを追求した、著者の処女作。著者は、名著『国富論』も執筆したイギリスの経済学者。

■岸信介 原 彬久著、岩波新書
インタビュー、獄中日記、米国側の資料を基に“権勢の政治家”を描く。

■根をもつこと シモーヌ・ヴェーユ著、山崎庸一郎訳、春秋社
カミュに影響を与えた哲学者による最後の著作。世界との絆を模索する。

■全体主義の起源 全3巻 ハナ・アーレント著、大久保和郎訳、みすず書房
自らが直面した反ユダヤ主義の経験を踏まえ、全体主義の系譜を解き明かす。

■アメリカとは何か 斎藤 真著、平凡社ライブラリー
気鋭のアメリカ政治史研究家が、アメリカの持つ二面性を浮き彫りにする。

■人種の問題 コーネル・ウェスト著、山下慶親訳、新教出版社
経済格差の視点に立って人種問題を批判し、解決方法を多方面から論じる。

■菊と刀 ルース・ベネディクト著、角田安正訳、光文社古典新訳文庫
戦時中、情報局の依頼で日本人の心理と行動を分析した日本研究の名著。

■強迫パーソナリティ L.サルズマン著、成田善弘・笠原 嘉訳、みすず書房
現代を「強迫パーソナリティの時代」と捉え、その治療について考察する。

(構成=鈴木 工 撮影=若杉憲司)