20代前半と50代後半の教員がビョーキになる理由

21世紀の初頭は、様々な教育改革が矢継ぎ早に実施されました。2007年の教育三法改正により副校長や主幹教諭といった職階が導入され、学校組織の官僚制化が進行し、また全国学力テストの再開により、教員の多忙化に拍車がかかりました。

教育課程の国家基準の学習指導要領をみても、2002年施行の「ゆとり」から2011年施行の「脱ゆとり」へと急転換され、現場は翻弄されています。こうした改革が教員の病気離職率増加につながっているとしたら、何とも皮肉なことです。

学校と外部社会の関係も変わってきています。

2004年に学校運営協議会制度が導入され、学校運営に際して、保護者や地域住民などの意向を聞くことが義務づけられました。まっとうな意見を言ってくれるのならよいのですが、最近は、学校に無理難題を突き付ける「モンスター・ペアレント」もいます。長年異なる状況下で教職生活を送ってきた年輩教員にすれば、戸惑いはさぞ大きいことでしょう。

年輩教員という言葉が出ましたが、病気離職率は年齢によって違っています。

表1は、2012年度の公立小・中・高校教員の病気離職率を年齢層別に計算したものです。分母ですが、当該年の本務教員数を年齢層別に知ることはできませんので、翌年の数値で代替しています。

入職して間もない20代前半と、定年間際の50代後半で高く、グラフにするときれいなU字型になります。教職生活の初めと終わりの危機。これをどうみたものでしょう。

年輩教員は体力の衰えもあるでしょうが、先ほど述べたように、時代の変化に対する戸惑いや不適応も大きいのではないでしょうか。彼らが入職したのは80年代の初頭あたりですが、当時と現在では状況が大きく変わっています。

若年教員は、入職したてで右も左も分からないためでしょう。それはいつの時代も同じですが、最近は先輩教員からのサポートを得るのが難しくなっています。今の学校現場は忙しく、新人教員を手とり足とり指導するヒマがありません。近年の教員採用試験で即戦力人材が求められるのは、そのためです。