――定年退職後、老後スタート地点で躓くケースはありますか。

【横山】退職金という形でまとまった大きなお金が入ると、急に気が大きくなり、それで失敗する人は結構います。子供や孫に気前よくお金を渡してしまい、いざ、自分たちの老後設計を考える段になると「そんなにかかるのか、お金が足りない」と呆然とするのです。話を聞いてみると、定年退職時には貯蓄が3000万円、退職金が3000万円、合計6000万円の資金があったという。なんとも驚きです。

【藤川】いい顔しちゃうんですよね。子供や孫にお金を使うなとは言いません。どうせあげるのなら、使い方が大事。生き金を使わないと。

なぜお金をあげるかと言えば、最後は自分の面倒をみてもらいたいとか、孫を連れて遊びに来てほしいから、といった本音の理由があるはずです。効果的ではないと思う方法は、教育資金贈与の特例を使い、孫の教育費にと、1500万円を一発でポーンと子供夫婦に与えてしまうやり方。子供夫婦も孫も、そのときは「おじいちゃん、おばあちゃん、ありがとう」と感謝しますが、それでおしまいです。

むしろ、毎年10万円とか100万円ずつあげたほうが、「今年ももらえるかな」と子供夫婦も孫も寄ってきますよ。暦年贈与で、1年間に110万円以下なら、贈与税がかかりません。「自分がもらうときは一気に、あげるときには小分けに」が基本です。

藤川太
家計の見直し相談センター代表。ファイナンシャルプランナー、CFP認定者。宅地建物取引主任者。
1968年、山口県生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科修了後、大手自動車メーカー勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。累計2万世帯超の相談実績を誇る。著書に『やっぱりサラリーマンは2度破産する』『年収が上がらなくてもお金が増える生き方』など多数。
 
横山光昭
家計再生コンサルタント。マイエフピー代表取締役。ファイナンシャルプランナー。
司法書士事務所勤務を経て、同社設立。個別の相談・指導では、お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムを生かし、これまで7000人以上の赤字家計を再生した。著書は累計57万部を超える『年収200万円からの貯金生活宣言』シリーズを代表作とし、著作累計86万部となる。
(小澤啓司=構成 小原孝博=撮影)
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