中小企業の社長よりもっと細かい会話をしているのが、ベンチャー企業の経営者だ。石原氏がこんな話を紹介する。
「若いベンチャーの人の話は『ウェブサイトのSEO対策をやったら会社の表示順位がこんなに上がった』『PPCでこんな手を打ったら、1カ月で3億儲かった』みたいな話をしている。ところが、その会話を聞きながらソーッとその場を離れていく人がいます。会話によって、つながる人たちのレベルが変わってしまいます。類を以て集まるわけですが、自分たちが正しいと思っているだけに、そういう話の輪に入ってこない人を否定します。否定される側には2通りあって、全然イケてない人か、超イケてる人の縁で人脈が広がっていく人です」
社長といえばゴルフの話題は欠かせない定番だが、近ごろのベンチャー企業の経営者にはゴルフをしない人が増え、スポーツの話題も変わってきている。最近、彼らが取り組むのはストイックな1人競技のトライアスロンやウルトラマラソンだという。経済記者として企業家の取材を手がけ、300人以上の社長にインタビューしてきて、『やはり、肉好きな男は出世する』などの著書がある國貞文隆氏がこう話す。
「ベンチャー企業家は淘汰され、いくつもの企業が生まれ、死んでいくのがベンチャーの世界です。したたかに生き残っていくには運と自己変革が必要です。失敗しても何度でも立ち上がらなければなりません。そのためにも折れない心を鍛えようとして、トライアスロンなど自己鍛錬を兼ねたスポーツをやる社長が多い。それを乗り越えることで、また自分に自信を取り戻すことができるのでしょう」
つまり彼らには意外とストイックな面があるのだ。というのも、経営者になる人は、自分のやろうとしたことをどれだけ守れたか、ということにこだわる性格なのだ。ささいなことだが、例えば小学生のときに夏休みの宿題をいつまでにやろうと決めたら、自分との約束をきちんと守って実行するタイプだ。それによって達成感を覚えたことが、ビジネスを成功させようとする意志力になる。さらに最初の立ち上げ時期にどれだけ集中力を保つことができるか。この2つが起爆力になっているという。國貞氏が話を続ける。
「企業家で成功する人が凡百の経営者と大きく異なる点は、ビジネスで無理だなと思ったときに、そこを突破しようとする意志です。それが生き残るための本当の実力で、そこからが経営者として一流になれるかどうかのスタートです。無理だなと思ったときに、ポジティブに考えることができ、ストイックに頑張れる。自分で構築した一家言をもち、基本的に鼻っ柱が強く、知り合いでない社長同士の会話になると、互いに一歩も譲らず、自分が話したいことだけ話して、相手に同意を求めることはありません。しかし、会話は常にポジティブ。経営者としてレベルが高ければ高くなるほど否定的なコメントはしません。逆に低くなればなるほどネガティブコメントをしまくります。それぐらいレベルの高い経営者は物事のとらえ方、解釈の仕方がうまい」