価値が下がりにくい「売れる家」はある

もし、これまで住んでいた家が売れないとなれば、維持費などがかかり、負の資産でしかない。後々、子供が相続しても困るだけだ。

では一方で、売れる家があるのかといえば、長嶋氏は「ある」と断言する。相続する不動産がこれにあてはまるなら、しばらく相場の行方を見るという選択肢もあるかもしれない。また、自ら新たに住宅を取得するなら、断然、「売れる家」を買うべきだろう。

「日本の不動産は大きく三極分化しています。1つめは、値上がりが見込める物件。2つめは、価値が落ちない物件。3つめは、大多数を占める価値が下がり続ける物件です」

1つめに当てはまるのが、赤坂、青山、白金など誰もが知っているような都心の超一等地にある物件だ。

「リーマンショックや東日本大震災の後、まだ価値が回復していないだけに、ロンドン、ニューヨーク、香港など世界的な都市と比べて割安。15%から20%は上がる余地を残しています」

ただし、これらのエリアにある不動産となれば、おいそれと手を出せるものでもない。一般に注目したいのは三極分化の2つめにあてはまる物件。これは、14年8月から施行された「改正都市再生特別措置法」にからむ、いわゆる「コンパクトシティ政策」によって、優遇措置を受けるエリアの物件だ。

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空き家率が最も高いのは山梨県、次いで四国4県

コンパクトシティとは、市街地の空洞化を解消して範囲を小さく保ち、歩ける範囲の生活圏においてコミュニティを再生し、住みやすいまちづくりを目指すもの。改正都市再生特別措置法により、各市区町村には「都市機能誘導区域」と「居住誘導区域」が設けられ、そのエリア内においては住環境向上のための補助や規制緩和が行われる。インフラ整備も優先で進むだろう。

「当然、そのエリア内であれば不動産価格は維持できる可能性が高く、上がる可能性すらあります。一方、エリア外となれば、三極分化の3つめにあてはまり、不動産価格は落ちるだけとなりかねません。まさに道路1本を隔てて天国と地獄。問題はその線引きが各基礎自治体に任されていること。すんなりとはいかないでしょうから、動向を注視する必要があります」

さらに長嶋氏が注目してほしいというのが、国土交通省の指導により来年度から変わるといわれている中古戸建て住宅の建物評価法だ。

「これまでは築20~25年を越えた物件はすべて価値がゼロとされましたが、これからは、たとえ同じ築年数でも物件によって700万円、800万円、やはりゼロですというように、建物の質や劣化具合によって差が生まれます。ようやく日本でも住宅が適正に評価され、本当の意味での資産価値が認められる時代がくるのです」

つまり、いまはゼロ評価でもあきらめることはない。価値が生まれる物件も出てくるというわけだ。

▼対策ポイント
・資産価値は下がって当然。売れるものはすぐに売る
・「コンパクトシティ」に認定されると価格向上も
・来年度から変わる!? 中古住宅の評価法に注意
不動産コンサルタント
長嶋 修
(ながしま・おさむ)
業界でいち早く個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所」設立。著書に『これから3年 不動産とどう付き合うか』『「空き家」が蝕む日本』など多数。
(遠藤素子=撮影)
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