TEDのような、「広げるに値するアイデア」を扱う会議は、ヘタをすると、社会を啓蒙するとか、福音をもたらすといった「上から目線」の罠に陥る危険がある。

だからこそ、自分たちで、自分たちの視点の至らないところ、ツッコミどころを笑ってしまおうという「振り返り」セッションの存在は、TEDの本質を考えるうえで、実は重大なポイントだと思う。

日本でも、「意識高い系」の人たちが、時に揶揄されたりする。社会を良くしたり、自分の人生を前に進めようとするのは良いとして、そこに自己批評がないと、確かに時には「イタイ」結果になる。

TEDは、間違いなく良い意味で「意識高い系」の人たちの集まりである。そのメッセージの多くは、現代の文明の本質的な問題を扱い、参加者は課題に真剣に取り組んでいる。そのことは素直に評価すべきだろう。

同時に、そのような自分たちの「意識の高さ」を、笑いを通して相対化することで、全体のセッションを終える。ここに、TEDがTEDである、最大の秘密があるのではないだろうか。

世の中には、「こうすれば世の中が良くなる」といった、もっともらしい話は多い。しかし、それが現実に着地するには、自らの欠点をも見据えた、相対化する視点が必要である。

意識が高いことは結構なことだが、同時に、自らのヴィジョンを相対化して、笑う余裕も欲しい。

最良の創造性は、自分の理想を笑う余裕の中から生まれてくるのである。

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