まさかと思わず、きちんと専門医の診療を受けること
ここまで老親の認知症を取り上げてきたが、実は若年性の認知症もある。職場の同僚にも十分に起こりうる病気なのだ。
「65歳未満の認知症を若年性認知症と言い、4万人はいると見られます。男性患者数が女性の2倍近くいることも特徴です。50代でも数%はいますから、大会社なら社内に患者がいても不思議ではないんです」
しかも若年性は病気の進行が速いという。
「ところが本人も周囲も様子を見ようとするため、受診が手遅れになりやすいのです。また、鬱病と誤診されることも多いですね。実際、会社で見られる症状としては、鬱になる、予定や約束を忘れる、伝言が伝わらない、仕事をミスする。本人も失敗を隠そうとするので元気がなくなり、性格も変わってきたり、言葉数が減ったりする。元気だった明るい人が無口になったり、飲み会に来なくなったり。それが最初のシグナルです」
そこで上司や同僚の勧めで診療所に行っても発見できないことが多い。
「会社の診療所では、大体鬱病と診断されて薬を出される。半年経っても変わらないために、これはおかしいとなる。そこでようやく専門医で認知症と診断されることが多いですね」
若年性は進行が速いだけに、周囲が気付いたら専門医での受診を勧めてあげたい。本人もまさかと思わず、きちんと専門医の診察を受けることが大切だ。
若年性ということは、今これを読んでいるプレジデント読者も世代的には当てはまる。何か簡単なセルフチェック方法はないか。
「なかなか難しいですが、逆さ言葉を言うとか、野菜や動物の名前をたくさん言ってみる。30秒で13個以上言えるか。8個なら危ないですよ。また、例えば『桜』『猫』『電車』の3単語を覚えて、数分後に思い出せるかどうかも目安にはなる」
若年性は、自分自身も予備軍なのだと理解しておきたい。