100人が100人とも守れるルールが必要
山田式3Sとは何か。細部までは説明することはできないが、その概略をまとめよう。
まず、3Sそのものの目的や定義が違う。
3Sの目的は「安全な職場・快適な職場・効率的な職場をつくること」。そして、「守るべきことを決めて、決めたことを守る」ことを徹底して、企業文化に高めている。
「整理」とは、要・不要に分けることだが、同社では4つに区分する。「要るもの(生品)」は4時間以内に必要なもの。「急がないもの(休品)」は5日以内に必要なもの。「当分要らないもの(長休品)」は6カ月以内に必要なもの。「要らないもの(死品)」は6カ月以上使用しなかったもの。死品と判断されれば、どんなに高価な材料も直ちに廃棄する。
これは、在庫の材料や備品に限らない。例えば、材料などが予定より早く入荷したら「急がないものを早く頼むな」となり、納期予定より早く作ったら「急がないものを早く作るな」と、自然にジャストインタイムに向かう。
山田は「3Sで一番難しいのは整理です。例えば、10万円する鋼材が6カ月以上置いてあっても、『もったいないから、あと半年様子見るか』と経営者自らルールを破ってしまう。もったいなくても捨てろと言わないといけません」と言う。
「整頓」とは「いつでも誰もが、要るものをすぐ(60秒以内)に取り出せるように並べておくこと」である。そのために、以下のような“5頓”を徹底する。それは、定位置、定量、定方向、表示、標識だ。
工場内にあるすべての工具、文具、消耗品、清掃道具などは5頓によって整頓されている。例えば、共有工具を整頓しておくボードには工具が並べられているだけでなく、同じ位置と方向に戻すように輪郭をなぞった姿絵がある。工具には名前を表示し、戻す場所には標識がある。工具を使っているときは、使用者の名札をその場所に貼っておく。
「5頓にすると、人は自然に片付けたくなる。100人が100人とも守れるルールが必要なのだとやりながら気づきました。しかし、完全な整頓ができている場所はまだ数えるほどです」と山田は語る。
「清掃」にも5段階がある。ゴミなし、チリなし、ホコリなし、汚れなし、そして最上がピカピカである。同社のレベルは現在、「汚れなし」で、毎朝8時から山田を含めて全社員で清掃を始める。重い機械以外の工具箱、ロッカー、什器などすべてキャスターがついており、それらを移動させながら隅々まで掃き、床や壁などを雑巾で拭く。工場内は21エリアに分けられ、3チームがそれぞれ1エリアずつ毎日交替で清掃する。トイレも素手で磨き上げる。
どんなに忙しくてもこの清掃を欠かさず、ずっと続けてきた。仕事と3S活動は同格なので、何の遠慮もない。毎週金曜日か出勤土曜日には1時間かけて3Sの改善活動を行う。この時間も仕事でつぶしたことはない。