海外のエリートが驚く日本人の強みとは
さて、これまで見てきたように、日本とアメリカでは教育が異なります。アメリカのエリート校は早い段階から教養を教えます。また、授業は議論中心ですが、膨大な予習とセットになっています。一方、日本では教養が軽視され、アメリカの学生が予習でやるようなことを授業で教わります。私自身、日本の大学で27年間教えていたので言いにくいところがあるのですが、日本の教育には改善すべきところがたくさんあるように感じます。
ただ、だからといって日本人が世界のエリートに太刀打ちできないとは思いません。ハーバードに留学に来た日本の学生を見ていると、伝えたい思いやコンセプトの伝え方は訓練が必要だと感じます。海外のエリートは、ディナー時に「What do you think?」と聞かれて、自分の考えを述べる訓練を子どものころから受けてきています。それに比べると日本人は経験不足。説得力ある主張をするためには、印象的な体験談やエピソードを引用する練習をもっとしたほうがいいでしょう。
しかし一方で、日本人はグループで作業するときに力を発揮します。私が担当したプログラムで、留学生がそれぞれの国を代表して何かやる「カルチュラルナイト」というイベントをやりました。そのとき日本の留学生たちは一致団結して入念な準備を行い、阿波踊りを披露しました。これがウケて、会場は大盛り上がり。日本人の株は急上昇しました。みんなの協力が必要な場面で発揮される日本人の強さについては、けっして海外のエリートに劣るものではないのです。
最近の日本の若者は内向きで頼りないというのもウソです。HBSで学ぶ日本人は、20年前と比べて減っています。しかし、それは若い人が内向きになったからではなく、企業派遣が減ったから。いま来ている学生たちは、数こそ少ないものの、何のために学ぶのかという強い目的意識を持っています。そういう意味では、情熱があって頼もしい。彼らに続く人たちが、もっと出てくると、日本はもっと元気になるのではないでしょうか。