代表の浮沈は五輪出場権いかんにかかる

一番の問題は日本代表の強化である。昨年9月、ワールドシリーズ全戦の出場権が懸かった「コアチーム昇格決定戦」で上位に入れず、昇格を逃してしまった。同10月、仁川アジア大会の決勝では中国に惜敗した。が、3月末の香港女子セブンズでは強豪を倒し、決勝に進出した。

アジアの最大のライバルが中国だ。日本が苦戦したオランダのようにサイズがあって、フィジカル、スピード、スキルもある。しかもコアチーム昇格を果たした中国はワールドシリーズを戦い、レギュラー選手の経験値が格段に上がっているはずだ。

日本としては持ち前のフィットネスで勝負するしかあるまい。「走り勝つ」のである。サクラセブンズの浅見敬子ヘッドコーチはオランダ戦の勝利の後も「何も満足していないです」と厳しい顔つきだった。

「最後のような試合を最初からやらないと、本番では勝てない。選手たちの力を最初から出してあげられなかったのは、私たちスタッフの責任です。もう一回、気持ちのところからやり直したい」

ことしの最大の勝負が、11月のリオ五輪アジア予選である。合宿や遠征を通し、個々のスピード、チームの連係プレーにどう磨きをかけていくのか。さらには、どう選手層を厚くしていくのか。時折混乱するディフェンスシステムの整備、試合中のコミュニケーションアップも課題である。

体格差の影響を小さくするため、コンタクトを極力避ける戦術も検討の余地があろう。浅見HCはこう、コトバを足した。

「選手のパフォーマンスとコンディショニングを見ながら、11月にほんとうにタフな12人のチームがつくれるように最大限努力します」

サッカーの「なでしこジャパン」のごとく、人気チームになれる可能性は十分、ある。もっと女子ラグビーに接する機会が増えていけば、ファンも爆発的に拡大していくはずだ。

「サクラ満開」となるかどうかは、サクラセブンズがリオ五輪に出場できるかどうかにかかっている。

松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)など多数。2015年4月より、早稲田大学大学院修士課程に在学中。
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