70年代初頭から始まった住友電工のシニア雇用対策

みずほ総研上席主任研究員の堀江奈保子氏は、定年延長が必ずしも人件費を管理するうえで大きな負担になるものではないとみる。

「大企業を中心に、ここ十数年で賃金制度の見直しを進めてきた。今は年功給の比率を下げ、成果給の比率を上げるなどして働きや成果に応じた制度にしている。役職定年制により、50代になると役職を外し、賃金を下げている場合もある。もともと、日本では、年功序列的要素が強い賃金体系になっており、中高年の賃金は働きや成果の実態と比べると、高いと指摘されることもあった」

堀江氏によると、雇用を延長する企業では、60歳以上のシニアを非正規として、1日8時間・時給1200~1400円の勤務で雇うケースもあるという。週2~3日のペースで勤務し、1カ月13日ほど出社するシフトを組む職場もあるようだ。

「フルタイムで週2~3日働き、月15万円前後の給与ならば、シニア世代の賃金相場としては特別に悪いものではない。ただし、60歳前の仕事と同じ内容でありながら、この額ではやる気をなくしてしまうかもしれない」

06年の法改正により、60歳以降の雇用延長の制度をつくった企業は少なくない。

「法改正に合わせただけの対応では、シニアを雇うことはコストにしかならない。シニア世代を、企業に利潤をもたらす社員として位置づけることが大切。そのためには、若いうちから計画的に人材育成をしていく必要がある」

さらには、利益をもたらすシニア世代を育成することがこれまで以上に必要になったと指摘する。

「若い世代だけではなく、中高年世代も計画的に人材育成することが必要になる。新卒で入社し、40年以上にわたり、市場の環境が変わらないことはありえない。OJTはもちろんだが、OFF-JTも効果的に行うことがより大切になる。65歳定年がスムーズに進む会社は、社員教育がよくできている」