子供たちの理科離れを解決したい

同社の事業を全て説明することはできないが、その他、国内最安値で解析・分析など研究を受託する事業、沖縄県で地元の食品残渣から作ったリサイクル配合飼料を活用した養豚事業、店舗内などで客に野菜を見せながら売るための植物工場ユニットの開発、出版事業などが主な収益源だ。

また、ユニークなプロジェクトでは、国際宇宙ステーションの「きぼう」を有償で借り受けて、宇宙空間で保管した植物の種や大豆などを地球へ持ち帰って、全国の小中高の生徒たちが栽培・観察する実験も行った。

3000万円もかかり大幅な持ち出しだが、丸は6000人の子供に知的刺激を与えたことが大きな成果だと語っている。

丸は、自社を「知識製造業」と位置づけ、大学、研究機関、企業などから日々生まれる知を小中学校生や社会に伝えるパイプ役になりたいと願っている。

丸がそう考えるようになった契機は、東京大学大学院に在籍していた時のこと、子供たちの理科離れが話題になり始め、就職先のない博士号取得者が大学院に多く残っていた。いわゆる「ポスドク(ポストドクター)問題」である。丸は、その実態を見て、このままでは日本の科学の土台が崩れると危機感を覚えた。基礎的な科学の研究はカネにならず、技術ばかりが重視されるようでは名ばかりの科学立国ではないかと思った。

普通は憂えるだけで終わるのだが、丸は違う。大学時代のバンド仲間など理系の友達15人を集めて、小学校などに出前で実験などを行う授業をボランティアで始めたのだ。だが、当初は学校側から門前払いの連続。大学院生がいったい何を教えられるのかと相手にされなかったが、そのうち受け入れてくれた学校があり、子供たちは丸たちの授業が面白いと喜んだ。その後、少しずつ学校からの依頼が増えた。こうして、大学院在学中の2002年にリバネスを設立、本格的に出前授業をビジネス化していった。だが、投資家も銀行も「そんなビジネスモデルで儲かるわけはない」ととりつく島もなかった。それでも丸は挫けない。儲けるために始めたわけではない、世の中に理科好きの子供を増やすことが目的だった。