日本で成功すれば他の地域でも成功する

フランソワ=アンリ・ピノー氏

クリエイティブが企業戦略からひとり歩きしてもいけない。かといって、ブランドの個性が失われてもいけない。ブランドのイメージ、商品、店舗コンセプト、広告すべてを管理するクリエイティブディレクターとの対等なパートナーシップが実現すれば、戦略的ビジョンに沿った上でブランドの潜在力を引き出すことができる。その事実をボッテガ・ヴェネタの例は証明している。

ケリングのラグジュアリーブランドの売り上げは13年度で64億7000万ユーロ(9058億円)。このうち、10%が日本単独で占められている。品質にうるさい一般大衆が高級品を難なく買い求める日本という巨大市場をケリングはどう位置づけているのだろう。

【ピノー】「日本は重要かつ特殊な市場であり、世界での商品展開に影響を与えている市場でもあります。品質の面でもラインナップの面でも、日本のお客様は非常にこだわりが強い。レザーでも高品質なものが求められるため、日本で成功すれば他の地域でも成功するということは確実に言えるでしょう。

とりわけ、スポーツの領域における日本のお客様の影響力は大きいですね。私たちはスポーツに関しては日本に専任のクリエイティブチームを置き、そのチームが作った商品を世界に展開する体制を敷いています。プーマで大ヒットしたボタンをはめるタイプのトレーニングシューズも、日本で開発され、世界中で販売されるようになりました。ある意味、日本はテストをする重要な場所。日本向けの商品全体の判断を下すのはイタリアでなければフランスでもない。日本のチームです。このチームが年間にヨーロッパに4回~6回足を運び、向こうのショールームの中で日本向けに商品を揃えています」

日本市場で存在感を示す外資系ブランドはどこも日本を熟知している。ケリングもしかりだ。巨大な消費地であり、シビアなテストマーケティングの場であり、商品の品質を高める場でもある特殊で巨大な市場を巧みにグローバルなビジネス戦略に組み込んできた。ケリングにとって日本市場は「背骨」の一つといったら大げさだろうか。

(三田村蕗子=インタビュー・構成 宇佐美雅浩=撮影)
関連記事
なぜ「ケリング」は進化し続けられるのか
ルイ・ヴィトンと無印とカレーの共通点
不況でも、なぜ高級ブランド品が売れるか
LVMHが早稲田大学とパートナーを組む狙い
カリスマが激怒!「アルマーニ争奪戦」秘話 -伊藤忠商事社長