自分で自分の年金をつくらなくてはならない時代になっていることを、肝に銘じるべきだ。とにかく早く対応を考え、行動に移してほしい。
やるべきことは2つある。まずは資産運用だ。先日、あるセミナーで上場企業の55歳以上のサラリーマン約150人に話をする機会があった。このうち資産運用をしている人は3割に満たなかった。勤労世帯の平均ではもっと少ないだろう。資産運用に対しては、「わからない」「怖い」と不安を抱く人も多い。しかし今は銀行に預けていても金利はほとんど付かない。老後のためには、リスクをとることも考えてほしい。
リスクの小さい金融商品としては、個人年金がある。節税メリットもあり、元本保証されるものなら貯金代わりにもなる。生命保険の個人年金には、利率が1~1.5%のものがある。さらに12年1月1日以降に加入(更新)した場合は、保険料8万円以上では4万円が控除対象となり、所得税と住民税が10%の人には8000円の節税となる。8万円を10%で運用したのと同じ効果だ。
為替や株への投資は、50代以上にはお勧めしない。30代であれば定年まで30年以上あるので取り戻せるが、ミドル世代は大損した場合に取り戻す時間がないからだ。
もう一つやるべきことは、70歳まで働ける自分づくりだ。定年延長や再就職では大幅な年収減になるため、「働くのがバカらしい」という人もいる。だが、働いて得られるだけの金額を資産運用で得るのは難しい。働き続けるほうが効率はいいのだ。資格取得をはじめ、定年後も長く働くための方法を考えておくべきだろう。豊かな老後には早めの対策が肝心だ。
1961年生まれ。ブレインコンサルティングオフィス代表。テレビ、雑誌では「年金博士」の名で知られる。著書に『給与明細で騙されるな』『「得する年金」大特集』などがある。