年齢別の男性ホルモン分泌量と来場者数の相関関係

マーケティングがいかにビジネスにとって有効であるかがわかっても、自分とは無関係のことだと思ってしまう人もいるだろう。

ロジカルな思考法に対して、苦手意識を抱く人も多い。しかし森岡は、「数学は世の中の因果関係、人の行動の本質的理由を導き出すための興味深い切り口を気づかせてくれる欠かせないツール」だという。

たとえば、マーケティングベースで人間の行動を分析したところ、面白いことがわかってきた、と森岡は面白いエピソードを聞かせてくれた。

それは、男性ホルモン(テストステロン)の年齢別分泌量と、テーマパークの年齢別来場者分布が極めて強い相関関係にあるということだ。

「男性ホルモンである“テストステロン”は女性にもあり、その年齢別の分泌カーブの形は男女共に非常に似ています。10代で一気に増えて、20代でピークを迎え、30代以降急激に減るのです。生殖行動と関係するとされるテストステロンの分泌量とテーマパークの来場者の年齢に相関関係があるとすれば、刺激と興奮をつくりだすUSJのようなテーマパークは、ゲスト本人すら意識していない"需要"を満たしているとも考えられます。そうすれば、18歳の女性1人が60歳の女性何十人にも匹敵するポテンシャルがあるマーケットだとわかるでしょう」(同)

「釣りとマーケティングは似ている」というのも森岡の持論のひとつだ。

魚(WHO:ターゲット)に、エサ(WHAT:便益)を、どうやって高確率で見せるのか(HOW:プロモーション)というのが、釣りの肝であり、マーケティングの目的である。そのため森岡は、ビジネスのたとえ話としてよく釣りを用いるそうだ。

 攻め続け、ヒットを飛ばし続ける森岡にとって、今夏オープン予定のハリーポッターのテーマパークも通過点でしかない。「いずれはアメリカから“自立”した純国産のパークを作りたい」(森岡)

いい意味で“クレイジー”な凄腕マーケターが、どんなアイデアをぶちあげてくれるのか今後の動きに注目していきたい。(文中敬称略)

「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?」
(角川書店刊)


今回インタビューしたUSJのV字回復の立役者・森岡毅氏が約3年間の復活のプロセスを執筆したビジネス書。独自のフレームワークを駆使したアイデア発想法など仕事で使えるスキルが満載。
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