それにしても大増税である。年収700万円の夫婦・子ども2人の世帯で15万2272円もの増税だ。しかし、八ツ井さんと『サラリーマン家庭は“増税破産”する!』の共著がある同センター社長の藤川太さんは、「消費税が20%を超えることが十分にありうると見ています」と警告する。
なぜなら、国の財政が逼迫しているからだ。10%へのアップで国に入ってくる増収分は10兆8000億円と試算される。11年度の消費税の税収分10兆1945億円と合わせて20兆9000億円強。しかし、すでに財源不足は48兆6000億円もあって、単純に消費税率を倍の20%に引き上げてもカバーできない計算なのだ。
また、所得税については12年度の税制改正で年収1500万円以上の人の所得控除額が13年分から245万円で頭打ちとなった。15年分からは所得税の税率が一部変わって、課税所得が4000万円を超える部分に45%の最高税率が課せられる。税理士法人タクトコンサルティング情報企画室課長の遠藤純一さんの試算によると、年収5500万円の人の場合、税額が104万円もアップする。
さらに、増税の動きは相続税にも及んでいる。13年の税制改正で、これまで「5000万円+1000万円×(法定相続人の数)」だった基礎控除が、「3000万円+600万円×(法定相続人の数)」へ、総額で見ると4割も引き下げられることになったのだ。その狙いと影響について遠藤さんが語る。
「課税の対象を中産階級にまで広げるためです。たとえば、定年を迎えて5年、10年という方で、東京の世田谷や目黒に一戸建ての住宅を持っている方が数多くいます。所有している土地が30坪なら5000万円、60坪なら1億円ほどの評価額になり、課税対象になる可能性が高くなるでしょう」
図2は遠藤さんがまとめた東京23区の10年における課税割合(死亡者数÷相続税の課税対象となった被相続人の数)で、この数字は今後アップしていくのが必至。さらに、今回の改正によって、これまで6段階だった相続税の税率の刻みが8段階に細分化されて、最高税率が50%から55%に引き上げられることになっている。
一方では、増税の痛みを緩和する「小規模宅地の評価減の特例」の拡大も打ち出された。この制度は同居していた相続人が相続後も居住する場合に、相続税の課税対象の評価額を8割減にするもの。「同居の要件として一棟の別々の独立区画に住んでいる場合には認められていませんでした。今回それが、一棟の建物に住んでいるのならいいということになりました。二世帯住宅のメーンストリームである別玄関のタイプの物件でもOKで、人気を集めているようです」と遠藤さんはいう。