4つ目が介護費用。表では3つのケースで医療関連費を試算したが、もっとも高いのがCさんのパターンだ。黒田氏は言う。

「糖尿病などの慢性疾患は長期にわたって治療費がかかります。悪化して寝たきりになると、これに介護サービスの費用が加わります」

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老衰vsがんvs慢性疾患。80歳死亡でいくら差が出るか(※黒田尚子氏監修)

こうした医療関連費以外にも想定しておくべきリスクがある。

「減給・失職リスク」もその一つ。手術前後に休職した場合、医療保険の傷病手当により標準報酬日額の3分の2は保障されるものの、アフラックの調査では、がん経験者の33%が「収入減」と回答。4人に1人が職を失っている(山形大調べ)という調査結果もある。

「若いうちから健康体を維持する。これが一番の節約です」(黒田氏)

最後に、日本の社会保障への過度な期待も大きなリスクであることを、あらためて挙げておこう。81年まで医療費の自己負担は0円だったが、30年あまり負担率アップが続いている。自分のことは自分で守る。その覚悟で老後に備えることが重要だ。

黒田尚子
ファイナンシャル・プランナー。大手シンクタンク勤務を経て独立。自身の乳がん体験をもとに、がんに対する啓蒙活動も行っている。著書に『がんとお金の本』。
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