●1月3日 告別式
「なにをいっている。そういう話は四十九日まで待て」
告別式の夜。一献傾けながら兄弟姉妹が遺産や相続について相談を始めようとすると、うるさ型の親戚がやってきて、不謹慎だからやめろと一喝する。昭和のお葬式ではありがちな“事件”である。
ただ、意見を真に受けて喪主(たとえば故人の長男)が口をつぐんでしまえば、後々もっと面倒なことになりかねない、と曽根氏は警告する。
「忌引の期間が過ぎれば、兄弟が顔を合わせるのは四十九日までなかなかありません。その間、相続についての情報提供がなければ、ご兄弟など関係者の間に疑心暗鬼が生じます。すると、たとえ正式な遺言書(公正証書遺言)があって、あとは粛々と手続きを進めるだけであっても、喪主である長男は何か都合の悪いことを隠しているのではないか、と疑われるのです」
たとえば、長男一家が老親と同居していて、親が病気になったときにその介護を担ったとする。遺言書には、その貢献度から長男に対して厚く財産を遺すと書かれている。
「こういうケースで遺言書の公開が遅れると、『兄さんは信用できない』『あいつは何か隠しているんじゃないか』というネガティブな気分が広まります。反対に、遺言書を早めに公開して兄弟姉妹の理解を求めていれば、『それなら自分は譲ってもいい』と納得してくれることが多いでしょう。相続をスムーズに進めるには、親と同居している側が、早めに、オープンに情報を出すことが大事なのです」
つまり早めに相続の話をするのは、兄弟姉妹など相続人の間に疑心暗鬼を生じさせないための知恵でもある。