また、日本では寝たきりの有権者など、ごく例外的にしか認められていない「郵便投票」も、欧米諸国では広く一般的に行われている。へんぴな田舎暮らしでも気軽に一票を投じられるそうだ。
郵便投票が実現しないのは、有権者本人でない者が不正な投票を行う可能性などが懸念されているから。それにしても「日本では、選挙制度の運営が真面目すぎるのではないか」と懸念する岩井教授。「不正を嫌がるあまり、投票の利便性が損なわれてはならない。コンビニなど生活に密着した場所でも投票できるよう、制度を柔軟に改めるべきだ」と主張する。
さらに、アメリカでは「インターネット投票」が実用化に向けて研究中であるという。岩井教授は、指紋認証などの個人識別技術が確立され、一般に普及していくことによって、いわゆる「ケータイ投票」が実現できると話す。そうなれば、投票率も向上し、有権者の意見を直接に集計する「国民投票」も容易になる。仮に実現すれば、日本の政治は大きく変わるだろうと、岩井教授は期待を寄せている。
民主主義社会を実践する中核であるはずの選挙制度。だが「一票の価値の格差」や「ネット選挙運動の禁止」など、旧態依然とした現状が放置されたままであり、問題点が多々見受けられる。
同様に、有権者が一票を投じるための「障壁」をなかなか取り除こうとしない国政の態度は、日本国の選挙システムの中途半端さを示す好例だと見られても、仕方のない状況にあるのは確かだ。