――世界的な金融危機のなか、三菱UFJフィナンシャル・グループがモルガン・スタンレー証券に出資を決め、野村HDはリーマンのアジア、欧州の事業を買収するなど、日本の金融機関が海外戦略を積極化させています。

【邦銀D】この出資に日本の金融市場は賛否両論となっています。過去、邦銀が外銀に出資して成功した事例はほとんどありません。出資しては撤退の繰り返しなんです。百戦錬磨のモルスタは「腐っても鯛」。9500億円といわれる巨額の出資が、便利なATM代わりと化す可能性も囁かれています。

【外資A】メリルリンチに1300億円を出資したみずほコーポレート銀行ですが、肝心のメリルはバンク・オブ・アメリカに買収されてしまいました。投資銀行業務のノウハウを得て、成果をあげる狙いがあったようですが、買収により、今後の行方は不透明になってしまった。

同様に三菱UFJは、モルスタに出資して投資銀行業務や証券業務のノウハウを得る腹づもりです。しかし、役員を1~2人派遣するといっても、どこまでモルスタの経営に関わることができるか。お手並み拝見というところです。

【外資C】そもそも今回の金融危機は、投信銀行業務というビジネス・モデルが立ち行かなくなったことを示しているのです。いまから、従来のビジネス・モデルを学んでもしかたないと思いますね。

【外資A】野村は、リーマンのアジア・太平洋、ヨーロッパ・中東の事業、インドの決済部門を買収しますが、買うのは各事業に関わる人材のみで、資産までは引き継ぎません。問題は、優秀な人材をどうつなぎ留めるかということに尽きるでしょうね。海外も含めてリーマンが破綻する前から、多くのヘッドハンターが動いていたし、破綻後は遠慮なく声をかけている。年収が億単位の人材がうじゃうじゃいる元リーマンの社員を、野村の給与体系で引き留められるとはとても思えません。