「グリーンカード制」を導入せよ

意外にも移民大国のアメリカと同じくらい「外国生まれ」が多い国がドイツだ。

ドイツも移民先進国の1つで、「ガストアルバイター(ゲスト労働者)」と称して、多くの移民を受け入れてきた。たとえば、第2次世界大戦後の労働力不足を補うために、トルコ系移民を大量に受け入れた。ドイツ語教育を徹底するなどの移民政策に国を挙げて取り組んできた結果、今やトルコ系は国会議員も輩出しているのだ。

暴力事件や排斥運動などドイツ社会が、移民に対して長らく葛藤を抱えてきたのも事実だが、もはやドイツ経済にとって移民は欠かせない存在になっている。トルコ経済の発展に伴ってトルコ系移民は減って、EUの統合や東欧拡大が進んだ90年代以降はポーランドやルーマニア、さらにブルガリア、ハンガリーなどの移民が増加してきた。

失業率4%台のドイツは、人手が足りない状態である。EU域内は人の移動が自由なので、最近は若年失業率が高いポルトガル、スペイン、イタリア、そして国が破綻しているギリシャからの移民も多い。ドイツ政府はそうした人材を専門学校に通わせてトレーニングを施し、労働市場に送り出すなどして、ヨーロッパの失業問題に一役買っているのだ。

失業率が低くても、足りない人手は移民で補うから労働コストは上がらない。だからドイツの国際競争力は高い。頑なに移民を拒み、モノづくりの基盤を海外に流出させている日本とは対照的だ。日本の場合、移民を入れる気もなければ、システムもない。私は『平成維新』を出版した25年前から「移民をしなければ日本の将来はない」と主張し続けてきたが、80年代のような泥縄式の移民政策ならやらないほうがいい。

私がかねてから提案しているのは「グリーンカード制」だ。それぞれの母国で優秀な成績で学校を卒業した人や、きちんと資格を持った人を積極的に受け入れて、日本語だけでなく、日本の社会習慣や生活の知恵、大まかな法律まで教えて、日本に適応できるようにする。2年間、無料で受け入れ教育を行って、成績が良かった人には永住と勤労を保証するグリーンカードを発行し、日本人と全く同じ条件で働けるようにする。グリーンカードで5年が経過して日本に残りたいなら、市民権を与えてもいい。

高校の授業料無償化よりも移民教育の無償化のほうがよっぽど意味がある。日本は少子化で学校施設も教師も余っているのだから、日本化教育(かつての植民地下における日本化教育ではない)に振り向ければいい。教師もやりがいが出てくる。