翻ってみて日本はどうか。主観的な自由度に対する評点は6.1にすぎず、エジプト、マリと並んで48位。もちろん主要先進国のなかでは最も低く、中国の7.2、ロシアの7.0をも下回っているのだ。民主主義国家に暮らす我々日本人としては愕然とするデータだろう。「日本人は見えない集団主義に縛られている」と目崎氏はいう。
社会的な少数派に対する平等な権利の保証度合いも幸福度と強い相関関係にある。その少数派として同性愛者に着目し、彼らに対する権利の保障度合いを検証した目崎氏は、「幸福度の高い国では同性結婚を認めているケースが大半だった。逆に同性婚を認めていない国で、幸福度の高い国はほとんどなかった」と指摘する(図5)。
では、これから日本人が幸福になっていくための処方箋とは、一体どのようなものなのか。目崎氏に問うと、「目に見えない集団主義からの脱却を図り、個々人が幸せを追い求めていくことが何よりも重要ではないか。人は自分の幸福の実現によって、はじめて社会全体のことにも目が向くようになる」という。
デフレ経済で足踏みしているとはいえ、日本は世界第3位の経済大国。冒頭で見たGDPの伸びに対する生活満足度の低さも、本来得るべき労働分配を求めることに躊躇していたからなのかもしれない。相手の意見にも耳を傾けながら、主張すべきは主張する。そんなディスカッションを続けていくことで、個々人の新しい幸福のあり方が見えてくるのではないか。
(AP/AFLO=写真)