中国に抜かれたとはいえ、日本は世界で3番目の経済大国である。しかし、いろいろなデータを紐解いていくと、日本人の幸福度は決して高くはないことがわかってくるのだ。「不機嫌」の正体を探ってみた。
国内から世界に目を転じてみよう。
公的機関による調査で、対象国の多いことからよく参考にされる指標の1つが国連開発計画の「人間開発指数(HDI)」。経済的な側面だけではなく、保健、教育、所得に関する国際比較可能な統計データに基づいて開発度合いを算出し、国別のランキングを行っている。11年の調査では187の国と地域がカバーされ、トップはノルウェー、最下位はコンゴ(図3)だった。日本は12位とトップテン入りを逃したものの、確かに上位につけている。
しかし、こうした統計データに基づく客観的な幸福感に関する調査の限界を指摘する声もある。国際文化アナリストで個人の幸福感と社会との調和を論じた『幸福途上国ニッポン』の著者でもある目崎雅昭氏は、「客観的な指標のように思えるが、どの統計データに基づくか、選択する時点で調査する側の主観が入っている。また、その国で暮らす人々の感情が一切考慮されておらず、本当の意味で1人ひとりが感じている幸福度とは違う」と指摘する。
目崎氏は10年かけて世界100カ国以上を回り、各国の人々の幸福度合いを肌で感じてきた経験を持っている。例えば、01年に財政破綻を起こし、HDIで45位のアルゼンチンには、新興国「BRICs」の一翼を担う隣国ブラジルのような経済的な勢いはない。しかし、首都ブエノスアイレスのどのレストランも毎日盛況で、タンゴを踊るサロンは朝まで活気に満ち溢れており、さほど不幸なようには思えなかった。