「あなたたちには何の興味もないです」

 横尾 なりますけれども、ちょっと違うんですよね。観客のためのエンターテインメントとしてのサービスは一切してないんですよ。

アトリエで描く時よりも、そういう鑑賞者がいる公共的な場所で描いたほうが、僕自身が解放されるんです。アトリエで描いているとどうしても頭脳的な作業になっちゃう。言語的とか観念的な作業になる。だから極力それを排除して、言葉とか観念を僕の中から追放して、なるべく頭を空っぽに、ものを考えない状態で、あたかもアスリートの瞬間芸みたいな感じで描くんです。

アトリエでは、自分でそういう操作をしなきゃいけないんですけど、公開制作の場所に行くと、みんなの視線が一斉に僕の体に、背中に突き刺さってくる。そうすると、考えが自然になくなっていく。どうでもいいやという感じになっていくんです。「あなたたちのために僕は描いているんじゃないんだ。ただ、あなたたちのエネルギーを僕は利用して、活用して、そのエネルギーで描いているわけで」と自分の中で切り替えができます。

(横尾 忠則,成田 悠輔/文藝春秋 電子版オリジナル)
オリジナルサイトで読む